ニッケイ新聞 2013年7月20日
カトリック世界若者大会(JMJ)のための法王来伯を来週22日に控え、リオ市ではセルジオ・カブラル州知事(PMDB)に対する示威行動と暴力行為が活発化し緊張が高まっている。
ブラジルは世界最大のカトリック大国であり、W杯ほどではないが、同大会には大イベントとして公的投資(7千万レアル)も行われている。これを機に、6月コンフェデ杯前に盛り上がり、いったんは鎮火しつつあるかに見えた〃抗議の波〃が、リオでは局地的に再活性化している。
6月の抗議では多くの標語が掲げられたが、今回の標的はほぼカブラル知事に絞られているのが特徴だ。17日晩には、同知事自宅近くの世界的観光地・レブロン海岸の商店など約25軒が破壊行為にさらされた。
最初は平和的だった抗議行動が、催涙弾やゴム弾を使って鎮圧する警察隊との衝突から激化した。若者らは火炎ビンを投げて抵抗し、覆面をした一部の約200人ほどが暴徒と化して付近の高級ブティックや銀行を破壊して回り、略奪行為を働いた(オ・レポルテル紙18日付けサイト)。
保守的と若者たちに思われている当地最大の放送局・グローボテレビ局レブロン支局にも攻撃の手が伸び、多数のゴミ箱や道路標識も破壊されるなど、局地的に先月以上の被害となった。
オ・テンポ紙サイト6月22日付け記事によれば、発端は22日から始まった、カブラル州知事の自宅近くにテントを張って医療・教育・W杯浪費反対を求める若者たちだ。最初は20人程度だった人数が増え、集会時には千人規模に達していた。
「示威行動に応じて対話をしてきたエドゥアルド・パエス市長(PMDB)とは対照的に、州知事は一貫して対話を拒絶し開き直ってきた。権威を誇示するその態度に若者らの抗議が集中してきた中、知事の空軍ヘリ私的乱用なども暴露され、一気に反感が高まったようだ」と解説する政治評論家もいる。
一方、身の危険よりも対話を重視する法王は、専用車の防弾ガラスを取り去り、生身を大衆の前に直接さらしてミサや行進を行う予定であり、治安対策を練る当局では緊張が高まっている。
アジェンシア・ブラジルは18日付けで、150万人の信徒が集まると予想される最大のミサ会場グアラチバへの、抗議行動参加者の入場拒否を発表した。覆面をした人も会場には近づけないよう対策が取られる。治安維持のために、警察と連動して軍隊約1万4千人が会場の内外、制服、私服で警備を担当するという、カトリック大国の威信をかけた超厳戒態勢がとられる。
スポーツ紙サンセプレス17日付けサイトは、プレッターFIFA会長がオーストリアでの記者会見で「コンフェデ杯での抗議行動が、来年再び起こるならば、我々は開催国の選択を間違えたのかと自問しなければならない」と語ったと報じ、伯字紙が大きく取り上げた。同会長はブラジルメディアに対しては「楽観している」と答えていた。
最初の欧州以外出身のフランシスコ法王による最初の外国訪問であるJMJには、世界中のカトリック信徒が200万人前後集まると予想されている。短期間にこれだけ多数が国内外からリオに集まるという意味では、W杯決勝戦はおろか、リオ五輪よりも大きなイベントとも言われる。
国際的大イベントが現在の当地で開催可能かどうか、ブラジル権威筋は〃抗議の波〃以降最大の試練にさらされている。