ニッケイ新聞 2013年7月23日
ここ数年、ルアン・サンタナやパウラ・フェルナンデスなど、セルタネージャ(ブラジル版カントリー)がチャート上位を独占していたブラジル音楽界に新星が現れた。それがアニッタ。リオ出身の20歳の新しいファンキの歌姫だ。
アニッタの曲「ショー・ダス・ポデローザス」は、ここ数カ月ブラジルのチャートで1位をとり続け、今月発売となったデビュー・アルバム「アニッタ」も初登場で1位を獲得。ここ数年のブラジル音楽界において最も派手なデビューとなった。
アニッタの人気に火をつけたのは動画の存在だ。動画サイト、ユーチューブでの「ショー・ダス・ポデローザス」は既に4千万アクセスに迫る勢いだが、これは世界的人気の米国シンガーのヒット曲並みの数字だ。
そんなアニッタだが、3年前までは経営学を専攻する、リオ在住の普通の学生に過ぎなかった。そんなアニッタの人生を変えたのは、一本の動画だった。それは、彼女自身が香水の瓶をマイク代わりに持って歌を歌うというものだったが、これがあるリオのファンキDJの目にとまり、歌手活動を始めることになる。
歌手活動の初期は、契約した事務所と裁判沙汰となり、多額の違約金を払う経験などもしたが、現在のマネージャーであるカミーラ・フィアーリョと契約後、現在に至る成功を手にすることになる。
その成功の秘訣は歌詞にあると言われている。これまでのファンキの歌の題材は犯罪や麻薬やファヴェーラでの生活といったものがほとんどだったが、アニッタは女性らしさのアピールや若者の素朴な心情を歌っている。中でも、男性の言いなりにならない強気な歌詞が女性の間で共感を集めているという。
また、そのファション・センスも、ビヨンセやブリトニー・スピアーズといった、ブラジルでも大人気のアメリカの女性スーパースターに慣れ親しんだ現在の若い世代の感覚に強くアピールしていると言えそうだ。
その急速な成長がゆえに批判の声も決して少なくはないアニッタだが、現在のブラジル最高の人気歌手イベッチ・サンガーロはアニッタを「生での歌い方を知っている歌手」と高く評価し、彼女の地元バイーアのフェスティバルにアニッタを呼び、「ショー・ダス・ポデローザ」を共に歌っている。(22日付けフォーリャ・デ・サンパウロ紙などより)