ニッケイ新聞 2013年7月24日
〃カトリック大国〃ブラジル—。かつては国民の90%がキリスト教徒でその90%がカトリックという圧倒的な数字を誇っていたが、現在は事情が異なる。今も世界で最も信者数が多い国ではあるが、21日付フォーリャ紙によれば、その割合は1994年の75%から57%(今年6月)に減り、週1回以上教会に行く人は17%に過ぎない。一方プロテスタント(福音派)は勢力を伸ばし、ペンテコステ系信者が10%から19%、それ以外の福音派信者は4%から9%に増えた。カトリック信者の数や神父の数は地域によってバラつきがあり、神父が国全体にバランスよく配置されていないという問題もある。
同日付エスタード紙によれば神父の数は地域によって差があり、住民の72・2%がカトリック信者の北東部では、神父の数が不足している。全国司教協会(CNBB)によれば、パラナ州では5900人に1人の神父がいるが、州民74%が信者のマラニョン州では1万3700人に1人の神父しかいないという。
神父の数が最も少ないのはピアウイー州との州境に位置するカシアス市周辺で、2万1900人に1人の割合。地方によっては年に1度か2度しかミサが行われない場合もある。同州都テレジーナから52キロのエスチーバでは、年1度のミサとノッサ・セニョーラ・ダ・ファチマの祭りの2度しか神父に会うことがない。住民は「子供に洗礼を受けさせるのに他の集落まで行かないといけない」とこぼす。
「神父が南部や南西部に集中しているのは教会組織が多いから」と説明するのは、サンパウロ・カトリック大学で神学を教えるアントニオ・マンザット神父だ。「CNBBでも全ての地域に平等に分配させる必要性を認識している」と言う。
ただ、地域格差はあっても神父の数はかつてないほど増えている。1970年は1万3千人だった神父の数は、2010年は2万2千人に増えた。オディーロ・シェレル大司教はエスタード紙の取材に「1980年までは聖職者の半数は外国人、つまり宣教師だった」と答え、聖職者は今後も増えると見ているが、マンザット神父は日常生活でも信仰を実践する人は減っており、聖職者も減ると見ている。
現在開催中の世界ユースデーの舞台でもあるリオの場合、カトリック信者の割合は他の地域に比べて低い。2010年国勢調査でのカトリック信者は総人口の64・6%だが、リオ市では51・1%、15〜24歳の若者では47・7%。同州の信者は全州で最も少ない45・8%で、プロテスタント、スピリティズム、アフロブラジル宗教のウンバンダ、カンドンブレーなどが台頭し、無宗教の人の割合も7人に1人と目立っている。
リオ州のカトリック信者の実態を調査した社会学者のシルヴィア・フェルナンデスさんは「リオ市は都会で、宗教への関心が薄まる傾向がある。教会のブロクラシーや融通の利かなさなども一因」と分析する。
また、ある調査機関は「ファベーラや郊外の住民への布教を中心に福音派教会の勢力が上がっている」と指摘している。