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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年6月4日

 2日のサンパウロ市でのゲイパレードは、雨や寒さ故か昨年の27万人を18・5%下回る22万人の参加だった。同性愛者差別発言をしたマルコ・フェリシアノ下院人権委員会委員長への抗議文などを掲げて行進する人々の姿などを見るにつけ、昔は同性愛という言葉にさえ嫌悪感を持つ人が多く、同性愛者である事を告白してつまはじきにされた人もいたのにと思わされた▼人の考えや態度は時と共に変わるといえばそれまでだが、つらつらと考える内、2012年の紅白歌合戦で「ヨイトマケの歌」を歌った美輪明宏氏の事を思い出した▼この歌は同氏が幼少時に一緒に育った友人の亡き母を回顧して作ったもので、母親が日雇い労働者である故にいじめられた友人の悔しさなども織り込まれている。華やかな衣装でシャンソンを歌っていた美輪氏が、炭鉱町でのコンサートにも観客が押し寄せてくれた事に感動して作った労働者を歌う楽曲は、1964年に発表されて非常に大きな反響を呼び、同性愛者である事を公表して低迷していた美輪氏が再び脚光を浴びる原因となった▼この歌は差別用語とされる「土方」「ヨイトマケ」といった言葉が入っていたために民放での放送禁止歌に指定された。同処置はやがて解除されたが、民放では封印され続けた曲は、デビュー60年目、77歳で紅白初出場の美輪氏によって再び大反響を呼び、45・4%の高視聴率を獲得▼「ヨイトマケの歌」復活は、外見や同性愛者である事はその人自身やその歌唱力、作品の価値を変えない事を再認識させてくれたが、当地で同性愛を公表、サンパウロ市のパレードで歌ったダニエラ・メルクリの場合は?(み)