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先住民らが政府側に抗議=政策変更の動きで苛立ち=テレナ族の死は氷山の一角=MSTも含む行動広がる

ニッケイ新聞 2013年6月5日

 【既報関連】5月30日に南麻州で起きた先住民と警官隊との抗争とインジオの死が、ジウマ政権での政策変更の兆しとあいまって先住民達をいらだたせている。4日付伯字紙によると、先住民による抗議行動は南大河州やパラナ州、サンタカタリーナ州などにも広がった。

 先住民と警官隊との抗争で死傷者も出たのは、南麻州シドロランジアのブリチ農園。同地域は2010年に先住民保護区に指定されたが、裁判所が2012年に農園主らの土地所有権を認め、国立インジオ保護財団(Funai)が上告中だ。
 ブリチ農園の所有者はリカルド・バシャ元下議で、5月15日にテレナ族が農園の一部を占拠したため、裁判所に立ち退きを要請。裁判所は上告裁判を待たずに立ち退きを命じたが先住民が応じず、30日に警察隊が派遣された。
 軍警はゴム弾と催涙ガス弾のみを使ったが、連警は先住民が火器を使ったとして実弾も使用。オジエル・ガブリエルさん(35)が腹部に被弾して死亡、先住民5人と警官3人が負傷した。先住民側は槍や弓矢と爆竹を持っていただけというが、バシャ氏は先住民は4年前から武装していると主張している。
 ジウマ大統領は事件後の5月31日に緊急会議を招集。Funaiも先住民の死を悼み、対話の欠如を嘆く声明を出したが、先住民は同日、ブリチ農園や近隣農園に再侵入。グレーシー・ホフマン官房長官が、先住民保護区制定には農務省やブラジル農牧調査研究公社(Embrapa)、農地改革省の助言も仰げるよう6月中に調整すると発表した事などで、先住民の不満は更に募った。
 ホフマン長官は、5月8日の下院で「Funaiは保護区制定のために必要な備えが出来ていない」と発言しており、3日にパラナ州の労働者党(PT)本部を占拠した先住民は、同長官と法務相との会談実現の約束を取り付けた上でやっと退去した。PT本部占拠は同州内11の保護区制定作業が中断している事への抗議でもあるが、先住民の抗議行動は同州パラナグアやサンタカタリーナ州セアラでも発生。南大河州では道路封鎖が行われ、南麻州では土地無し農民運動(MST)がカンポ・グランデまでのデモ行進を始めた。
 連邦政府はジョゼ・エドゥアルド・カルドーゾ法務相とルイス・アダムス総弁護庁長官を軸に、行政と司法が一致した形の解決策を模索中で、6日には先住民リーダーとの会合も開く。全国司教会議(CNBB)は3日、ホフマン官房長官に先住民保護区の制定継続を要請し、制定作業に農業関係者を加えるなら先住民代表も参加させるべきだと進言した。
 ジウマ大統領は、抗争事件発生を防ぐため、早急な解決法回避を指示。南麻州では3日に出た48時間以内の退去命令が撤去された。カルドーゾ政権で始まった先住民保護区制定はルーラ政権でも継続されたが、現政権では足踏み状態だ。