ニッケイ新聞 2013年6月5日
【既報関連】昨年12月、ブラジル国内で牛海綿状脳症(BSE、狂牛病)が発生したとの報告があったとする国際獣疫事務局(OIE)の発表を受け、日本を含む数カ国がブラジル産牛肉の輸入停止を継続している問題について、近日中に日伯間のやりとりが解禁される見通しが高いことが本紙の関係者への取材で分かった。
昨年12月8日、「2010年にパラナ州で死亡した13歳の牛の死因がBSEだった」とのOIEの発表を受けた日本の農水、厚生両省は、ブラジル産加工牛肉製品の輸入を緊急停止した。
これに対しブラジル政府は、この死因が汚染された飼料によって発病する従来型のBSEではなく、脳の老化などによって起こる特殊な例であることを強調。OIE側も、ブラジルに対するBSEリスク評価を「無視できるレベル」に据え置いたが、日本側の輸入停止措置は現在まで継続している。
在ブラジル日本国大使館の森田健太郎書記官(農水省より出向)によれば「日本政府側は昨年12月の問題発生直後から、農水・厚生両省を通し、ブラジル側に公式な調査結果求めていた」とし、今年3月18日にMAPA(ブラジルの農務供給省)の関係者が訪日、両省関係者に調査結果に関する資料を手渡したという。
この資料は、内閣府に設置された食品安全行政を行う機関である「食品安全委員会」で諮問され、安全評価に対する検討が行われている。
これに対し、MAPA関係者の訪日にも随行したブラジル食肉輸出最大手JBSのエドアルド・モンテイロ対日輸出担当は先月24日、本紙の取材に対し、「日本の食品安全委員会は、ブラジル国内の研究所2カ所と第3国1カ所での、従来型のBSEの発生ではなかったとの再検査結果を求めた。これは近日中に提出される手はずになっており、その時点でほぼ間違いなく日本側の輸入解禁が決まるはず」と話し、「6月末に予定されるジウマ大統領の訪日が、解禁をさらに決定付けるのでは」との明るい見通しを語った。
ため息もらす輸出業者=200トン在庫も処分か
「民間としてはどうしようもない状況。何とかして欲しい」と嘆くのは、加工牛肉等を扱う輸出業者の代表のAさん=本社・サンパウロ市=。今回の日本による輸入停止措置によって、全社取引の半分が失われた。
12月時点で輸送中だったコンテナは、停止処置のために日本で入港できず門前払い、当地に戻ってきてもブラジル政府側の「BSE発生はない」という見解との板ばさみ…。「結局再度日本に向かうことになり、日本側の港手前の保税地域で処分した。一往復半の輸送費と処分代で大赤字が出た」との損害を被った。
それに加え、契約加工業者のもとには約200トンの在庫が残る。Aさんが懸念するのは、たとえ輸入が解禁しても、この在庫を処分しなければならない状況に追い込まれることだ。
「ジウマ大統領の訪日を含め、何とかなりそうだという話は聞いているが、やはり日本側が『発生はなかった』と認めた上での解禁にならなければ在庫は全て処分せざるを得ない。良い形での決着を祈るばかり」とため息まじりに話した。