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大西洋岸森林=1年で235平方キロ消失=08年以降最大の面積=現存の原生林は8・5%=開発計画は懸念材料の一つ

ニッケイ新聞 2013年6月6日

 世界環境デーの5日、2011/12年の大西洋岸森林(マッタ・アトランチカ)の消失面積は、2008年以降最大の235平方キロメートルだったと伯字紙が報じた。大西洋岸森林は国内で最も消失度が高く、今も残る原生林は8・5%に過ぎない。

 大西洋岸森林はピアウイから南大河州までの海岸部や内陸のゴイアス、南マット・グロッソ州など17州にまたがり、パラグアイやアルゼンチンに達する熱帯雨林・常緑広葉樹林で、アマゾンの約4分の1の1億ヘクタールを覆っていた。
 だが、ポルトガル人が上陸した1500年以降、森林は徐々に失われ始めた。19世紀半ばのコーヒー栽培開始後は、農地造成などで森林消失が急速に進んだ。
 非政府団体(NGO)のSOSマッタ・アトランチカと国立宇宙調査研究院(Inpe)によると、11年8月〜12年7月の消失面積は、森林地帯219平方キロ、海岸部の湿地や沼地(塩性湿地)開発15平方キロ、マングローブの破壊0・17平方キロなど、総計235・48平方キロに上る。
 08/09年と09/10年の伐採面積は平均151・83平方キロ、10/11年は140・90平方キロだから、11/12年の消失面積急増ぶりが良く分かる。
 バイア、エスピリトサント、ゴイアス、ミナス・ジェライス、南マット・グロッソ、パラナ、リオ、南大河、サンタカタリーナ、サンパウロ州の10州を対象とする調査開始は1985年で、消失面積は衛星写真と地上調査を併用して算出される。
 州別の森林消失面積1位はミナス州の107・52平方キロで、10/11年の70%増しだ。製鉄業などに使う炭の生産が盛んな同州では消失面積が4期連続で増えている。州検察局は、製炭業者らが無許可または許可を得ても違法なやり方で森林伐採を行っており、伐採後に植えた木も原生種とは異なるユーカリが大半であるとして州政府などを起訴。同州裁判所は4日までに伐採の即時停止と、ユーカリの撤去と原生種の植林の2判決を言い渡した。
 消失面積2位はバイア州の45・16平方キロで、3位は今回から調査対象となったピアウイ州の26・58平方キロ。エスピリトサント州と南マット・グロッソ州は消失面積が93%と92%減少し、注目を集めた。
 サンパウロ州での消失面積は前期比で7%減り、民間の自然資産保護区(RPPN)も三つ増えるが、5月25日付エスタード紙によると、サンパウロ市市役所がピニェイロス川沿いにある25万6700平方メートルの土地への住宅建設と1787本の木の伐採を許可。森林伐採が気候変動や災害増発に繋がる事などは広く知られるようになって来たが、サンパウロ市とその周辺を結ぶ環状線の北部ルート(計画中)も太西洋岸森林の中を走るなど、開発の名の下で行われる伐採の全面排除は困難だ。