ニッケイ新聞 2013年6月6日
国全体の医療保健インフラの脆弱さが深刻な問題として指摘される中、サンパウロ州地域医療審議会(Cremesp)が州内にある公立の救急病院(プロント・ソコーロ、以下PS)の58%は超満員で、入院患者が廊下のベッドに寝かされていたと報告した。5日付エスタード紙が報じた。
また、5日に放送されたグローボのニュース番組「ボンジーア・ブラジル」では、患者の応対において何らかの深刻な問題を抱えているPSは全体の70%に上ると報じている。
2〜4月に71の公立病院(23はサンパウロ市内、48は35市、州内の救急病院の10%に相当)で行った調査によれば、トリアージ(事前の識別作業)が行われていないために命に関わる重篤な患者の治療が遅れる可能性のあるPSは全体の3分の1、基本的な医療器具が足りないPSは59・2%、医師不足に悩むPSは57・7%あった。
同審議会はPSが超満員になる原因として、患者が近所で初期治療を受けられるような基本的なインフラ(サンパウロ市の例ではAMA、ポスト・デ・サウーデなど)が整っていないことと、行政の保健医療への投資不足を指摘し、「州や市の責任」を問うている。
一方、州保健局は「州政府は予算の12%を保健医療に充てており、PSの患者が超満員になっているのは、それぞれの市にも原因がある」とする。これに対し、サンパウロ市保健局も、保健省と協力して17の緊急診療所を改修し、21を新たに開設しようとしていると釈明している。保健省は2012年は前年より20%増の934億レを保健医療に投資し、そのうちの100億レがサンパウロ州に充てたと説明している。
同審議会顧問のブラウリオ・ルナ・フィーリョ医師は、「優先的に治療を受けるべきなのに受けられない人が沢山おり、検査に必要な設備や技師も不足している。住民側はお手上げの状況」と現状を憂慮する。
またサンパウロ医療協会のフロリスバル・メイノン会長は、今回の調査の結果を「サンパウロ州に限らず、国全体で何年も前から解決されずにいた問題が数字で表われたもの」とし、「PSの問題は随分前からある。インフラ未整備や医師不足は、投資不足の結果」とみている。
なお2日付エスタード紙は、サンパウロ市が運営する医療施設では歯科医が33%(520人)不足していると報じている。1074人いる歯科医のうち70%は半日勤務で、治療台の30%に欠陥があるため取り替える必要があるといった報道は、投資不足は歯科治療の現場でも起きている事を浮き彫りにしている。