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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年6月11日

 農園への不法侵入で訴えられ、5月30日の強制立ち退きでは警察との抗争で死傷者も出した南麻州の先住民テレナ族が6日、ブラジリアで法務大臣や大統領府総務室長らと3時間半会談した。先住民側は先祖伝来の土地に白人達が入って来て自分達を追い出したと考え、農園主側は保護区指定を受けた農園をただで明け渡さなければならないのが納得できない▼現政権の先住民保護区制定は人口密度がより高い地域に広がる事もあり、環境保護にも繋がる新保護区の面積はサルネイ政権以降最低で、農地買い取りなどの打開策を検討中だ。政治的に見れば、議会での発言力もない先住民に肩入れして農業族議員の支持を失うより先住民を犠牲にした方が得。ルーラ前大統領は労働組合やMST(土地なし農民運動)、先住民の代表とも頻繁に会ったが、ジウマ大統領がこれらのグループの代表と会う事は少ない。MSTや先住民に土地を与えれば農用地がその分減り、農業族議員達から突き上げられて、選挙資金も入らなくなる▼ブラジルの貿易は一次産品の比重が大きい事もあって、00〜11年に農用地が70%増えた南麻州や農業が盛んな南大河、パラナ州での保護区制定中断には経済的、政治的判断が働いているとか。国立インジオ保護財団(Funai)の権限縮小への動きにも農業界の圧力ありだ▼ベロ・モンテ水力発電所建設現場での先住民との抗争などもあり、Funaiトップは7日に辞任した。環境保護や先住民保護、少数グループの文化保護などに伴う見返りは少ないかも知れないが、目先の利益に動かされず、長い目で真の豊かさを保持して欲しいところ。(み)