ニッケイ新聞 2013年6月13日
ブラジルの左翼に関する歴史の権威でジャーナリスト、元第2次大戦兵士でもあったジャコブ・ゴレンデール氏が11日、90歳で亡くなったと12日付伯字紙が報じた。
数多い著作の中でも、『暗闇での闘い』(1987年)は軍政時代の左翼に関する歴史の名著とされており、他には『植民地時代の奴隷制』(1978年)が有名。
1923年にロシア出身ユダヤ人の両親のもとに生まれた。サルバドール法科大学に在学中、PCB(ブラジル共産党)に入党、学生運動に身を投じた。43年、第2次大戦中に20歳でブラジル遠征軍(FEB)に入隊し、イタリア戦線などに派遣されて戦った。
帰還後はリオに移り、左翼系の新聞で働き、サンパウロやモスクワに住んだ。軍事政権の樹立後は67年に国外追放され、翌年にPCBR(ブラジル革命共産党)を設立。その後再びサンパウロで逮捕され、たびたび拷問を受けている。
軍政時代、DOPS(政治社会警察)に逮捕された時に同氏と知り合ったというジウマ大統領は哀悼の意を示し、「(ジャコブ氏は)私の人生の困難な時代において大切な助言者だった」とコメントした。
マリア・アパレシーダ・デ・アキーノUSP歴史学部教授は「彼の人生の軌跡そのものが重要で、1940年からのブラジルの生き証人のような存在」と話している。