ニッケイ新聞 2013年6月13日
高知県人会(片山アルナルド会長)が9日、同県人会館で恒例の『慰霊祭』を開催、約50人の参加者が静かに先没者を弔った。
坂本竜馬がデザインされた大きな垂れ幕を背景に午前10時半から、しめやかに執り行われた。
約250人の会員のうち、百人を超える会員が80歳以上。参拝した80歳以上の高齢者24人の敬老者表彰も行われ、記念品も贈呈された。
法要後は、テーブルに鯛の蒸しや姿寿司など、県人会自慢の郷土料理が所狭しと並べられた。毎年慰霊祭に参加している、ブラガンサ・パウリスタ在住の石元壮宜さん(93)の乾杯の音頭で、和やかに食事会が開かれた。
高橋一水前会長夫人のマリアさんからレシピを伝授され、鯛の蒸しを担当した東かよこさん(64、二世)は、「これからは、若い子たちにも郷土料理を伝えていきたい」と話していた。
同県人会では昨年から、20〜30代の若手が土佐祭りを開催するなどして会を盛り立てている。
武吉七郎さん(81)は「世代交代が徐々に進み、県人会を母体にした新しいコロニアの傾向が生まれてきている」と若者の参入を喜んだ。
また同日、会員の平島末子さん(70、二世)から高知原産の特別天然記念物、尾長鳥の剥製が寄付された。今はなき父親が、45年ほど前に帰国した際に持ち帰ったものだという。
百歳の僧侶、田鍋さん=達者な姿に家族も笑顔
慰霊祭で導師を勤めたのは、7月で100歳になる会員の田鍋義美さん(法名=義照)。法要の後は、皆で田鍋さんの誕生日を祝った。
「一世紀の誕生日、心からお喜び申し上げる」と片山会長が挨拶すると、田鍋さんは「大勢の皆さんに祝ってもらい、家族一同感謝する」と応え、家族7人と共にケーキカットし、笑顔を見せた。
1913(大正2)年生まれ、15歳で渡伯した。サンパウロ市ジャグアレ区の日本人農家の下でジャガイモ栽培に携わった後、35年にイタペセリカ・ダ・セーラ市に移り、独立。90年まで県人会の地方支部長もつとめた。
真言宗の信徒で、ヴィラ・カロンでの高野寺創立や行事の運営を手伝うなどしていたが、「友達の僧侶が亡くなった時、その弟に『僧になれ』といわれ」、96年に高野山で僧籍を取得した。
以来、百姓をしながら、スザノの金剛寺で毎月行われる法要や、個人宅での仏事を請け負ってきた。同県人会で導師をつとめるのは今年で3回目。百歳とは思えない達者な姿に、「本当にお元気」と会場から感嘆の声がもれた。
息子の田鍋セイチョウさん(63、二世)は、「穏やかで優しい良いお父さん。長生きしてくれて嬉しい」と笑顔をみせた。