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AUTOMEC=新しいステージへ向かう=自動車部品業界の日本勢

ニッケイ新聞 2013年6月15日

ブラジル日本移民105周年

 【輿石信男=ニッケイ新聞東京支社長代理】4月16日から20日まで、サンパウロ市のアニェンビー国際展示場にて、リード・エグジビション・アルカンタラ・マッシャード主催による中南米最大の自動車部品見本市「第11回サンパウロ国際自動車部品及び関連サービス見本市(AUTOMEC2013)」が開催された。出展者は中南米全体から約1200社、来場者も約72カ国から7万人以上が訪れた。乗用車の販売数で世界第4位、近々日本を抜くと言われるブラジルは、世界中の部品メーカーにとってホットな市場となっている。近年、自動車市場においては韓国、中国メーカーに押され気味だが、これは部品業界も同様。これまで日本の自動車メーカー対応としての進出の色合いが濃かった日本の自動車部品メーカーも、日本車のシェアが伸び悩むブラジル市場での戦略見直しを迫られている。今回のAUTOMECには、大手から中小まで、従来の殻を破って新しいステージへと向かう多くの日本企業が初出展した。

アイシングループ=欧米メーカー攻略で=4年連続売上倍増を目指す

 今回出展した日本企業の中で、ひときわ注目を集めていたのがアイシングループ(本社愛知県刈谷市、藤森文雄社長)ブースだ。ブース入口に据え付けられたデモカーは、その美しさから展示会場の人気撮影スポットの一つとなっていた。ブラジルではあまりまだ知名度がない同社だけに、その製品アイテムの多さとラインナップは来場者を驚かせたようだ。
 「アイシングループとして、新興国での販売を強化するためのグローバルプロモーションの第一弾がこのAUTOMECです」。今回の見本市のために、日本から駆け付けた調達部門統括専務役員、榎本貴志氏が今後の展望を語った。
 「ブラジルでは主にボディ関係、エンジン部品やミッション関係を扱っており、昨年度の売り上げが4800万レアル、今年はその約2倍の8400万レアルを見込んでいます。これまでは、主にトヨタ自動車やホンダ向けに納入をしてきましたが、これからは日本メーカーだけではなく、欧米の自動車メーカーにも売り込んでいきます。すでにGMブラジルとは成約をし、5月にはFIAT工場内で内覧会を実施します」
 今回は、ブラジルに工場を持つアイシン精機だけではなく、グループ企業8社を挙げての出展となっている。AUTOMEC出展の成果を榎本専務は次のように語った。「グループ会社のアイシンワールドコープ・オブ・アメリカは、アフターマーケットの商材を扱っていますが、昨日も千万円単位のオーダーがありました。また、カーメーカーの調達部門の方も来られ、エンジン機器の見積もり依頼もあり、今回の出展は成功と言えるでしょう。まだまだ、ブラジルでの知名度が低い当社にとって、今回は名前と存在を知ってもらうための出展でしたが、実際の成果もついて来ました。今後、このような広報活動を継続的に行い、市場の大きいブラジルで14年以降も倍々で成長したいと思います」。2011年に新工場をイトゥ市に開設し、アイシンは次なるステージに大きく一歩踏み出したようだ。

KYB=拡大するアフターマーケットでシェア争い

 KYB株式会社(東京都港区、臼井政夫社長)は2000年のブラジル進出からすでに13年。今回は、新規のビジネスとして参入を検討しているサスペンションのB to C市場向けのマーケティングのための初参加である。現地法人であるKYB – Mando do Brasil Fabricante de Autopecas S.A.(パラナ州ファゼンダ・リオ・グランデ市、代表Marcio Cyrino Brull)副社長の阿部尊史さんに話を聞いた。
 「オフロードが多く、道路の舗装状況も良くないブラジルは、アフターマーケットにとっては、実に魅力的な市場です。日本のようなきれいに舗装された道路がある国では、一般的に車のショックアブソーバーを自分で替えることは少なく、したがってアフターマーケットもあまり大きくありません。しかし、ブラジルの場合、その道路状況から車にかかる負荷が高いため、部品の摩耗も早く、多くの人が掛りつけの修理工場があり、アフターマーケットで部品を買って、頻繁に交換します」。ブラジルならではの市場を見つけたといえる。
 「実はすでにKYBは多くの国でアフターマーケットに参入していますが、ブラジルの市場は日本よりも大きく、将来的にはアメリカの2分の1ぐらいになると見ています」
 ブラジルにおける勝算はあるのだろうか? 「品質=耐久性と、ラインナップ、そしてジャパンブランドで勝負をしていきます。今回の出展は市場調査のようなものですが、反応は上々です。5年以内に国内の10%のシェアを取りたいと考えています」

住友ゴム=パラナ州に工場設置し本腰入れる

 すでにアフターマーケットへも市場参入しているDUNLOPは、多くのブラジル人にとっても、なじみ深いブランドであり、AUTOMECも常連かと思いきや、今回なんと初出展。
 「いよいよ今年の10月から、ブラジルで現地生産が開始することもあり、このAUTOMECを皮切りに、モーターショー、4輪スペアパーツショーとブランド認知を高めるために出展していく予定です。今回はライバルメーカーが参加を見送ったこともあり、絶好のタイミングでした」と語るのは、スミトモ・ラバー・ド・ブラジル(パラナ州ファゼンダヒオグランデ市、代表:小田一平)の営業統括役員谷村一晴さん。
 「住友ゴムとしては、昨年6月から輸入販売を始め、すでに14社の卸会社と取引をして全州をカバーしています」。パラナ州の工場が稼働すればさらに販売網の拡大が可能となりそうだ。「新工場は500人ぐらいの陣容からスタートしますが、最終的には1500人体制になる予定です。ブラジルは、人口も多く、年々増加しており、さらに広い国土と他の交通インフラの整備遅れも相まって自動車のニーズ・保有台数はまだまだ高まると考えています。アフターマーケットは日本の1・5倍から2倍のポテンシャルがあると想定しています。2016年のオリンピックイヤーには、ブラジル国内向けに乗用車用だけで日産1万5千本の出荷を目指しています」。新工場での生産開始をきっかけにさらなる飛躍が期待できそうだ。

スター社=身軽さと技術力武器に注目浴びる

 車のドアのへこんだ部分に次々とくぎのようなものをはんだ付けし、それらがムカデのようになったところで、一気に引っ張ってへこみを元に戻し、手品のように釘を取り去るパフォーマンスですごい人だかりの株式会社スター(群馬県藤岡市、石原光政社長)。
 「3年前からブラジルとはコンタクトを取り、出展を検討していました」というのは、貿易部部長小林俊介さん。「BRICsの一つとして今後マーケットが伸びると考え、販売店を探すために出展しました」。デモの盛況ぶりから、結果は聞くまでもなく「大成功です。今回、その場で売ってほしい、代理店になりたいという申し出がたくさんありました。新車、中古車の販売数から、板金工の年収まで調査しましたが、日本とほぼ同じか、それ以上でした。われわれと同じ製品はまだブラジルにはありません。今回の展示会を機に本腰を入れて、ブラジル市場に参入します」。スターの今後は、日本の中小・中堅企業のブラジル進出にとって大きな試金石となるだろう。

輿石 信男

【略歴】株式会社「クォンタム」代表取締役。神戸市生まれ。出版、人材開発ビジネスを経て、株式会社クォンタムを設立。国際連合において「地球サミット・国際環境技術博覧会日本館」のプロデュースや「日本ブラジル環境フォーラム」事務局長、ブラジル農業のフィールド調査事務局長などを手がける。