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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年6月18日

 13日付伯字紙に、頭に傷を負い顔面を血に染めた男性が別の男性を組み伏せ、銃を構えた写真が掲載された。サンパウロ市のバス料金値上げに対する抗議行動4日目の11日、セー広場での落書きを止めようとし、約10人から投石や殴る、蹴るの暴行を受けた軍警が「リンチにかけろ、殺せ」との叫び声に銃を抜き、防御の姿勢をとったものだ▼本人も「軍警としての20年間で最も緊迫した状況の一つ」という場面は、暴行を止めようとした抗議行動参加者が警官に連絡し、それらの人々の手で救出という形で幕を引いた。同軍警は入院加療後、5日間の自宅療養や検査を命じられた▼自分も地下鉄やバスを使うという軍警は、「警官も私服の時は一般市民同様に料金を払って利用する」とした上、「平和的なマニフェストには賛成だし憲法で認められた権利も尊重するが、混乱を起こそうとする動きには反対」と発言した。軍警は新料金が高いか否かの言及を避けたが、6日からの騒動では参加者と軍警、一般市民に負傷者が出ている▼11日に乗ったバスの中は抗議行動を煽る政治家や社会運動家への不満の声が高かったが、料金値上げに不満のある人を焚きつけ、一般市民も危険にさらし、町を恐怖に陥れる、公共、私有施設を破壊するという人の存在や、他者の権利や苦境を認めず、自分の権利のみ主張して他者を忘れるやり方は対話や和解の芽を潰す▼インフレ率以下の調整のためバス会社への補助金の重圧に呻く市財政、人件費等の諸経費を担う地下鉄やバス会社の立場をどの位理解しているか知らないが、一部の心無い人の行動に振り回されぬ、対話努力を願いたい。(み)