ニッケイ新聞 2013年6月19日
「ブラジルよ、目を覚ませ!」—。17日夜、公共交通機関の料金値上げへの反発を発端とするデモが、国内12州、25万人規模で展開された。18日付エスタード、フォーリャ両紙などが報じた。サンパウロ市で6万5千人、全国で25万人という数は、1992年8月にコーロル元大統領の罷免を求めて起きた暴動(サンパウロ市で7万人、全国で35万人)に次ぐ規模だ。
これまでのサンパウロ市やリオ等での抗議行動は、公共交通機関の料金値下げ要求が中心だったが、17日のデモは政治への不満や拒否感が強く打ち出され、治安の悪さなどの社会不安や汚職、医療や教育の劣悪さ、インフレにW杯開催への不満等、〃全て〃を訴えるものへと様相を変えている。
サンパウロ市ピニェイロスに集まった6万5千人はオタヴィオ・フリアス・デ・オリヴェイラ橋まで移動後に二分。大半はパウリスタ大通りに向かったが、バンデイランテス宮前では、数千人の参加者中約30人が門を破って侵入しようとしたため、軍警が阻止しようとして、混乱が起きた。
10万人が集まったリオでは州議会侵入も起き、警察との衝突で12人の負傷者が出、5千人が集まったブラジリアでは議会の屋根を参加者が占拠し、カリェイロ上院議長やフェリシアーノ下院人権委員長解任を求めて叫ぶ声などが響いた。
ポルト・アレグレでは政治の透明性と汚職撲滅、世界有数の犯罪都市となったベレンでは犯罪率低下が主訴となり、ベロ・オリゾンテ、クリチバやロンドリーナ、サルバドール、マセイオ、レシフェ、ヴィトリア、フォルタレーザなどにも抗議の輪が広がった。
一連のデモには政党が絡んでいるとの見方が強かったが、ダッタフォーリャの調査によれば、17日にサンパウロ市で集まった人の84%は特定政党への傾倒がなく、71%が初めての参加と答えた。
参加者の77%は大学卒業者で学生は22%、53%は25歳以下。参加の理由は、バス料金値上げ反発56%、汚職への反発40%、暴力や抑圧への反発31%、公共交通機関の改善要求27%、政治家不信24%などだった。抗議運動参加者は、MPL、組合員、学生、同性愛者、年金受給者、パンクスや無政府主義者、左翼集団、労働者、左派政党関係者など多岐に渡る。
デモに対する政治家の反応は様々で、ジウマ大統領やカルドーゾ元大統領は「平和的なマニフェストは合法」「デモが暴力的だと言っているだけでは解決しない。抗議行動の背景には公共サービスの質の悪さや汚職などがあると知るべきだ」とコメントした。「ヴァンダリズムは許さない」としていたアウキミンサンパウロ州知事は一転してMPLに賛辞を送るコメントを出し、「対話する準備がある」との姿勢を示した。
デモについては米国やスペイン、フランス、ニューヨーク、イギリスなどのメディアも一斉に報じ、国外に住むブラジル人や彼らに賛同する人たちも抗議行動を行うなど、諸外国でも少なからぬ反響を生んでいる。