ニッケイ新聞 2013年6月19日
ジウマ大統領が設定した基礎的収支の黒字目標(国内総生産(GDP)の2・3%)達成のために、公共投資削減が必至と18日付エスタード紙が報じた。今後の経済活動活性化の鍵は投資とされる中での投資削減は、「入るを計って出るを制す」の大原則に立ち戻る事に他ならない。
歳入と歳出の差である基礎的収支の黒字目標を当初予定のGDPの3・1%から2・3%に引き下げたのは、米国の格付会社スタンダード&プアーズ(S&P)がブラジルの格付見通しを「安定的」から「弱含み」に引き下げた翌週の事だ。インフレ目標以外の経済目標は機能しなくなったなどという報道も続き、これ以上信頼感が揺らぐ事を現政権が嫌った証拠でもある。
だが、5月に発表された予算削減額は昨年より小規模な上、景気刺激のために導入した減税措置などで、新たに設定された基礎的収支の黒字目標さえ、達成を疑問視する声が出ている。連邦政府が追加の予算削減を行う可能性があり、その額は最低200億レアルと試算されているが、問題はこれだけの予算を削減するのは困難な事だ。
政府内では、GDPの2・3%の基礎的収支黒字達成には、予算や公共投資の削減と共に、サントス沖の油田開発のための入札などの特別収入や税収増加といった要因が必要との見方が広がっているというが、経済活動が活性化しない中での大幅な税収増加は困難だ。
ジウマ政権では、政権初年の11年、基礎的収支の黒字目標達成のために公共投資のペースを落とし、議員割り当て金の支出延期といった措置をとった。12年も、非常事態の際使えるよう08年に開設したソブリン・ファンド(FSB)を80%ほど取り崩して帳尻を合わせるという、初めての手法がとられた。
基礎的収支の黒字は公的負債に伴う利子の支払いなどに使われ、政府の財政政策が健全か否かを計るバロメーターにもなるが、実際には、ルーラ政権時代にも、経済活性化計画(PAC)の経費を一般会計から外すという方法で基礎的収支の黒字目標達成と報告された事がある。
インフレ昂進や為替の不安定さなどで財政政策への批判が高まっている事もあり、公共投資の削減は発表済みの計画停止の形ではなく、支出を遅らせる、規模縮小という形で行われる見込みだ。為替市場は、外国投資呼び込みなどを目的とした金融取引税撤廃後も、17日の終値は1ドル=2・172レ、18日も取引開始直後に2・186レに達し、9時50分と10時20分に中銀が介入など、ドル高レアル安の動きが続いている。