ニッケイ新聞 2013年6月19日
サンパウロ市の20センターボのバス賃値上げ反対に端を発する示威行動が、異様な盛り上がりを見せている。たかがセンターボとバカにするなかれ。コンフェデ杯という世界中のマスコミが集まる機会を捉えて注目を浴び、とんでもない勢いで広がっている▼ほんの10日ほど前、サンパウロ市で左派学生中心の数千人で始まったデモ行動は、17日晩には大学のある主要都市40カ所に広がり、中でもサンパウロ市、リオでは一般市民の支持を得て各々10万人規模のデモ行進にまで発展した。軍警の鎮圧行動が逆効果となり、火に油を注ぐ結果になっている▼17日夜のクルツーラ局の討論番組に、デモ行動を呼びかけたMPL(交通費無料運動)の2人、共に20代程度の女子学生と男性教師が出演した。取り囲む10人ほどの伯字紙記者や軍警OBら識者を前に、自信あふれる態度で激論を交わした▼2人の話では、05年に活動開始したMPLは、まず「サンパウロ市のバス賃値上げ撤回」を目指し、最終的には「公共交通機関の無料化」を訴えていく。「W杯の建設浪費反対」も主張に加わり、最初こそ理想主義的、学生の左翼運動的な発想だったが、現在は一般市民の支持を受けて拡大してきたから無視できない存在になった▼10年前、極左から中道までが大同団結してルーラ大統領を押上げたが、政権をとった途端にPTは中道集団になってしまい、数年前から最左翼部分が敏感に反発を始め、今回はついに分裂に至ったようだ▼今は10万人規模のデモだが、もし百万人になったら王手だ。来年の大統領選挙ではPSDBでもPTでもない「第3の候補」に票が集まる流れかもしれない。(深)