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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年6月22日

 近頃、TVを観ると「ひったくり」や強盗事件を報じるニュースがやたらと目に付く。しかも、女性のショルダーバック強奪も、さながら暴力映画の再現のようであり、とてものほどに防ぎようがない。かよわい女性を殴る蹴るの乱暴も平気の平左だし、今のサンパウロやリオは、平和で穏やかな暮らしとは縁を切り「悪の街」になってしまった▼強盗も毎日のことであり、もはや小さな盗みなどは、事件扱いにもされない。あの女性歯科医を襲った強盗殺人のような悲惨極まりない猟奇じみたものでないとマスコミも目を向けない。ATMへの襲撃も、ダイナマイトの如き爆発物を仕掛けての攻めであり、完全防備が売り物の銀行も完全にお手上げ。それが5台も10台も一挙にやられるのだから銀行もたまったものではない▼先ごろのTVでは、昨年に比して強盗などの凶悪犯罪が74%も増えたと報じていたが、庶民にとって最も怖く恐ろしいのは、あの「メンサロン」のような政界の巨額汚職よりも、こんな身近に起きる暴力なのである。ブラジルの2大都市の強姦も物凄い数字になり、米のNYタイムズが取り上げ話題になった。もうこの国は「安全な国」の看板を返上し、「犯罪都市」へと衣替えした方がいい▼「バス賃値上げ」に反対するデモが、瞬く間に全国的に広がり、ジウマ大統領が物凄い罵倒に晒されコンフェデ杯の開会式で得意の演説を出来なかったのも、あるいは、こんな名も無い国民の怒りが爆発したからではないか。それに—インフレ6・5%などもあり政府抗議が急増し、政治不安高まっているのは—ご用心ご用心である。(遯)