ニッケイ新聞 2013年6月27日
【既報関連】サンパウロ市でのバスや地下鉄の料金値上げに反対する人達の声に端を発した〃抗議の波〃が、連邦議会の審議にも影響を及ぼし、25日の下院本会議が憲法補足法案(PEC)37号を否決し、石油生産に伴うロイヤルティを教育や保健衛生のために振り当てる法案を可決したと26日付エスタード、フォーリャ両紙が報じた。
サンパウロ市での150人規模の抗議行動(6日)が、20日には全国で125万人に及ぶ〃抗議の波〃を引き起こすなど、国民の不満や要求が顕にされた事で、連邦議会にも明らかな変化が現れた。
〃抗議の波〃は、バスや地下鉄などの料金値上げへの抗議が発端だが、料金値下げで解決するとの思惑は完全に外れ、19日のサンパウロ市やリオ市の料金値下げ宣言後に一気に拡大、今も全国各地で抗議行動が続いている。抗議行動参加者が掲げる要求は多岐にわたり、公共サービスの質の改善、PEC37反対、汚職の撲滅、コンフェデレーションズ杯やW杯に使う多額の公共資金を教育や保健衛生などに回せ等々の叫び声が全国各地で繰り返された。7月11日には労組によるゼネストの話も出てきている。
このような状況を変えねばと考えたジウマ大統領は、21日の演説や24日の全国の知事や州都市長との会議での五つの公約提示に続き、25日にも最高裁長官や上下両院議長と会談を行った。24日に提示した公約の一つは、政治改革のための制憲議会発足の可否を問う国民投票実施だったが、ジウマ大統領は25日の諸会談などで制憲議会発足は困難と判断。国民投票については、どのような政治改革を望んでいるかを問うためと目標を変更の上、詳細の検討を進めている。
一方、25日下院は、検察庁が持っていた捜査権を市警や連警に委ね、検察は捜査結果を見て容疑者を起訴するか否か判断するだけにするというPEC37を、賛成9、反対430、棄権2で否決した。PEC37反対は、メンサロン事件の公判など、検察による捜査が判決を決定付ける例も多い事を知り、検察の捜査権剥奪は汚職防止の意味でも拙いと考える人々が、一連の抗議行動の中で訴え続けた項目だ。
エンリッケ・アウヴェス下院議長は、ロイヤルティに関する審議などでPEC37の審議が遅れる事を恐れ、特別審議で優先的に投票を済ませたが、PEC37否決は連邦議会も国民の声を無視できなくなった事を明らかにした。
上下両院は25日に、教育や保健衛生、汚職撲滅などに関する議案を優先的に審議すると公約。26日未明には下院が、2012年12月以降成立の石油採掘契約に伴って発生するロイヤルティの75%を教育、25%を保健衛生に回すという修正法案を承認した。上院では、汚職を口封じなどを目的とした殺人や強盗殺人、強姦などと同様の重篤な犯罪と位置づける法案や、公共交通機関のための減税その他を優先的に審議する意向だ。