ニッケイ新聞 2013年6月28日
ジウマ大統領が学生運動家だった60年代後半、治安警察(DOPS)に逮捕された時に撮影された調書の写真は有名だ。デモ隊の中には、その写真の横に「我々の戦いはまだ終わっていない。コンパニェイラ(同志)よ、共に!」と書かれた紙を掲げた若者の姿が新聞に掲載された。分厚いレンズの眼鏡をかけた若き日のジウマは、まったく飾りっけのないボザボサな髪型をしている▼その彼女があれから40数年後、26日付けフォーリャ紙にテレビ演説前に毎回3125レアルもの公費を調髪化粧費として払っていると批判された。月に一度は首都ブラジリアを訪れ、ジウマ大統領のヘアメイク(調髪化粧)を担当する専属スタイリストは日系三世のセルソ・カムラさんだ(12年9月20日付けに詳細)▼今回のテレビ演説前にもカムラさんは首都に行っており、「私の日課は1万レアルなの。でも大統領はお得意さんだから安くしているのよ」とヴェージャ・サンパウロ誌サイトの取材に余裕のコメントを返している。「大統領専属」との肩書きのためには普段は無料で調髪し、特別な時だけ金をもらうとか▼新聞雑誌の大半は数十万部程度のブラジルでは、全世帯の90%以上が所有するテレビの影響力の大きさは計り知れない。今の政治家にとってテレビ映りは何よりも重要だ。カムラさんは「私が調髪化粧したのはテレビ演説の前の日。当日は自分で化粧直しをしているはず。もう一人でも立派なもの」と賞賛し、「でもあの時、大統領は寡黙で神経質そうだった」とも▼「髪は女の命」ともいうが、ジウマの髪型の変遷は長い月日の間に変わった何かを象徴しているのか。(深)