ニッケイ新聞 2013年6月29日
インディオ宣教師協議会(Cimi)の調査によると、2012年は60人のインディオが殺害され、一昨年に比べ、先住民への暴力行為の件数が増えたと28日付エスタード紙が報じた。
殺害された先住民の数は、近年も突出した07年の92人以降、08〜10年60人、一昨年51人と減ったが、12年はまた60人に戻った。特に、農業従事者と先住民との間で土地を巡る争いが頻発している南麻州では、61%に当たる37人が殺害された。
ブラジリアの全国司教会議(CNBB)本部で行われた調査報告では、殺害予告などの脅迫から教育、医療の不備まで、様々なタイプの暴力的行為が全般的に増加していると指摘している。
住居や所有地への不法侵入や保護区の不法開拓などの資産に対する暴力は、11年の99件から125件に26%増え、脅迫や殺人、殺人未遂、人種差別(蔑視)、傷害、性的暴力などの個人への暴力行為も、378件から1276件に237%増となった。
最終報告書を取りまとめた一人で、哲学者のロベルト・リーブゴット氏は、暴力行為の最大の要因は「土地に関する争い」と指摘し、「保護区制定妨害を目的とした、農業関係セクターによる先住民の権利を侵害する行為が増えている」と説明する。
保護区の制定が遅れている南部や中西部は、農業関係者の組織化が進み、土地価格も高騰しているため抗争も多い。法定アマゾンでの先住民への攻撃は、材木会社や鉱業会社によるものが中心だという。「現存する材木資源の大部分は先住民の居住区に眠っている。鉱物資源がある地区でも先住民への圧力が高まる一方だ」と指摘する。
暴力行為の増加は、ジウマ政権で顕著になった政府の先住民保護区制定の遅れが原因と見られ、調査員が殺される事件まで発生している。
調査によれば、全国にある1045の居住区の内、339(32%)は先住民への返還が決まっただけで、暴力行為防止のための措置は何もとられていない。293(28%)は保護区指定を検討中で、そのうちの44が大統領の裁可を待っている状態だ。現政権は民政復帰後の政権中、先住民保護区制定が最も少なく、その数は年平均5件にすぎない。
Cimi事務局長のクレーベル・ブザット氏は「連邦政府は喫緊に歴史的負債を解消する必要がある」とし、「居住地を失った先住民は文化継承が困難で、自殺の増加にも関係している」と指摘する。土地を巡る抗争が激しい南麻州では昨年、グァラニー族9人が自殺した。全国では23人の自殺が確認されている。