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港湾ターミナル民営化は?=下院の暫定令審議に遅れ=上院での承認間に合うか=主要港では無期限ストも

ニッケイ新聞 2013年5月16日

 【既報関連】昨年末に連邦政府が出した港湾ターミナル民営化のための暫定令(MP)595号の有効期限切れ目前の14日、下院が同MPの主文をかろうじて承認と15日付伯字紙が報じた。連邦政府は、有効期限の本16日までに上院での承認を取り付けるため、綱渡り的な攻防を繰り広げている。

 ブラジルの輸送網の脆弱さがブラジルコストと呼ばれる高経費と国際的な競争力の低下を招いている事は周知の事実だが、港湾での手続きの煩雑さや規約の改善でコストを削減し、競争力回復を図るために連邦政府が講じた方策の一つが港湾ターミナルの民営化だった。
 連邦政府が最初の民営化の対象と発表したのはパラー州ベレン港とサンパウロ州サントス港のターミナルで、民営化を謳う159カ所の港湾ターミナルの内、42のターミナルは新規ターミナルだ。
 同MPでは、1993年以前に民間企業が操業している港湾ターミナルは、2013年に再入札を行って民営化する事になっており、2月には、民営化に反対する港湾関係者や労働者らが、サントス港で中国船籍の船の占領やストなどの抗議行動を起こしている。
 ブラジルの港湾で扱う貨物量は年々増加しており、2012年の輸出量は5億2540万トン、輸入量は1億4480万トンに達している。
 ところが、扱われる貨物量の増加に追いつかないのが、管理運営の近代化や港湾設備の拡張、港湾までの陸上輸送網の整備など。史上最高の豊作とされる穀物も陸上輸送や港湾作業の能率の悪さで流れが止まり、ガルガロと呼ばれる状態を生み出している事や、荷積みが出来ずに中国が大豆の買付をキャンセルした事なども記憶に新しい。
 こういった状況改善のために打ち出されたのが港湾ターミナルの民営化で、新しいターミナルの建設許可までの手続きの簡略化といった利点もある一方、港湾労働者がマンパワー管理機関(Ogmos)に個別登録されているとコスト高になると指摘するのは港湾利用企業の経営者もいる。
 MP595号が失効すれば旧態依然の運営方法に戻るため、連邦政府は10億レアル規模の議員割り当て金の支出や選挙区でのイベント出席には大統領専用機への同乗を認めるなどの譲歩策を提示、承認取り付けに躍起になっている。
 14日の下院審議は、定足数割れや議員同士の口論などで一時中断したものの、民主運動党(PMDB)議員が出した修正動議否決後にMP595号の主文を承認。18時間に及ぶ審議で承認が漏れた部分の審議は15日午後、再開したが、サントス港とパラナグア港では、MPに反対する労働者達が14日午後から無期限ストに入った。
 他方、14日中に審議開始の予定だった上院は15日午後からの予定を変更。15日中に審議に入り、16日には承認との筋書き通りに行くかは予断を許さない状況だ。