ニッケイ新聞 2013年5月16日
最高裁判所が14日、米国のドロシー・スタング宣教師が2005年にパラー州で殺害された件に関し、ヴィタルミロ・バストス・デ・モウラ(通称ビダ)容疑者に対する3度目の裁判を無効にした。15日付フォーリャ紙が報じている。
ブラジルに40年以上住み帰化もしていたドロシーさんは、アマゾンでの森林伐採反対運動の先鋒として世界的に知られていたが、05年2月にパラー州アナプーで、ドロシーさんの農地改革運動を快く思わない地主のグループから6発の銃弾を受けて死亡した。この事件は世界的にも大きな反響を呼んだ。
同事件では、実行犯や計画犯が計5人逮捕されたが、その一人のビダ容疑者は、ドロシーさんが農地改革を行おうとしていた土地の大地主で、殺害犯に殺人を依頼した人物として逮捕された。
ビダ容疑者は2007年に懲役30年の判決を受けたが、刑期が20年を超えるために受けた翌2008年の第2審で一転して無罪となった。
だが、判決を不服とした州検察局がパラー地裁に上告し、こちらでは2審が無効となった。
3度目の裁判は2010年に行われたが、ビダ被告の弁護人は法廷に姿を現さなかったため、パラー地裁は被告に弁護士をつけ、12日に裁判をやり直した。新しい弁護担当者は急な交代で文書が読めなかったとして、裁判の中断とビダ被告への人身保護令適用、ビダ氏が次の裁判までのあいだ自由の身であることなどを求めたが、同地裁はビダ容疑者に30年の刑を言い渡した。
これに対し最高裁は14日、被告弁護人の権利が十分尊重されていなかったとして裁判無効の判断を下したが、その一方、ビダ被告は次の裁判まで刑務所で待つようにとの判決も下された。ビダ被告には現在セミ・アベルト(昼間外出許可)が適用されている。
同州検察局はビダ氏が殺害命令者であることを確信しているという。