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ブラジルの競争力殺ぐガス価格=投資を見直す企業続出=シェールガス開発加速で=輸入増加傾向にも拍車

ニッケイ新聞 2013年5月17日

 ブラジル工業界が国際的な競争力を失ってきているといわれる中、米国で進むシェールガス開発がブラジル工業界を直接・間接に圧迫していると13日付エスタード紙が報じた。

 ブラジル工業界の国際的な競争力喪失は輸出の伸び悩みと輸入拡大にも見られ、4月の工業製品販売額に占める輸出の割合は12年末の20・6%から20・4%に減少。一方、消費財に占める輸入品の割合は第1四半期、昨年同期の20%から22%に拡大し、新記録を更新と16日付エスタード紙が報じている。
 国内産業の不振は生産コスト高や国際的な経済危機ゆえとされ、ジウマ大統領が電力料金値下げを前倒ししたのも、工業界の回復促進策だった。ところが、工業界は、生産や雇用の上下動を繰り返し、回復軌道に乗りきらない。そんな折に出たのが、米国の廉価なエネルギーがブラジル工業界圧迫との記事だ。
 工業界では、原材料や機械を動かす動力源となるガスの価格は、利益率などにも影響するが、米国では従来のガス田ではない頁岩(シェール)層と呼ばれる場所から採れるシェールガスの生産開始で、ガス価格が100万BTU当たり2・5〜3ドルまで下がった。
 一方、ブラジル内の天然ガス価格は100万BTU当たり12〜16ドルと高く、ガス消費量の多い化学、石油化学、陶器・ガラス製造業などは投資計画の見直しを余儀なくされている。
 3年前、8億レアルを投じてサンパウロ州グアラチンゲターに工場を建て、今年から自動車用のガラス製造を始めるはずだった多国籍企業AGCもその一例で、この間に国内のガス価格が倍になった事で建設計画を無期限停止。ガス価格がブラジルの5分の1の米国やアラブ首長国連邦、サウジアラビア、エジプトなどへの投資増額を検討中だ。
 ブラジルをラ米地区への輸出拠点とするために10億レアルの投資を決めていた多国籍企業のセブラセも、アルゼンチンやコロンビアに方向を転換。ガーディアン社も、07年は10%だった板ガラス輸入量を35%に拡大している。
 化学工業界でも、ブラジル化学工業会(Abiquim)による、10年は1450億ドルだった売上額を20年に2600億ドルにする計画が3年で頓挫。化学工業界の投資は年40〜50億ドルで、年160〜170億ドルだった当初見込みの4分の1だ。
 ペトロブラスと提携してリオ州石油化学コンビナート参加を考えていたブラスケンも昨年末、メキシコでの石油化学工場建設に32億ドルの投資を発表。ブラスケンのコンビナート参加計画は立ち消えと見られている。
 Abiquimは、5年前から加速したシェールガス開発でエネルギー関連の世界地図が書き換えられ、ブラジルが完成品輸入国に転ずる可能性を懸念。化学・石油化学工業界の投資見直しや輸入拡大は、ブラジルの伝統産業の玩具製造業にも影響を及ぼし始めている。