ニッケイ新聞 2013年5月18日
サンパウロ人文科学研究所が主催する勉強会『第7回コロニア今昔物語』が16日、文協会議室で行われ、約10人が参加する中、ブラジル音楽評論家の坂尾英矩さん(81、神奈川)が「ブラジル音楽とその道の日系パイオニア」というテーマで講演を行った。
用意された20以上の音源を使いながら、500年前の国家成立当初から、サンバやボサノバに至るまでのブラジル音楽の変遷が示され、ブラジルポピュラー音楽界で活躍した日系人についても言及した。
「全く驚異的」と賛辞を惜しまなかったのが、1958年にミナス・ジェライス州で行われたセルタネージャの全国大会に出場したヒロシ、マサシの栗森兄弟。戦後移民でありながら、自らが作詞・作曲した「Saudades do Japao」を披露し見事第2位に輝いた。大会後には、レコードデビューまで果たしたという。
「彼らが凄いのは、ほぼ完璧なサンパウロの田舎のなまりまで駆使していたこと。加えて、曲の間奏には日本の童謡が挟みこんであり、それが全く違和感を出さない。本当に驚くべきこと」と興奮した面持ちで語った。
そのほか、「ブラジルジャズ界で知らない人はいない」というトランペッターの右近雅夫、テレビ局の職員時代に見初められ、大手レコード会社RGEの専属歌手としてデビューした林オルガ(芸名・ブビー)などが紹介され、来場者は興味深げに耳を傾けていた。
日本からの1カ月の旅行の最中で、知人の紹介により夫婦で訪れた立川和夫さん(67、東京)は「知らないことばかりで非常に興味深かった。日系人の活躍についても初耳で、本当に勉強になった」とびっしりと書き込んだメモを見せながら、感想を語った。