ニッケイ新聞 2013年5月22日
医師不足がより深刻な北伯や北東伯に、スペインやポルトガルからの医師を再評価せずに〃輸入〃するという話が一部、合意に達し、ブラジル政府が2〜3年のビザを発給する意向だが、連邦医師審議会(CFM)は医療の質低下に繋がるとして、ジウマ大統領に合意差し止めを申し入れたと20、21日付ブラジルメディアが報じた。
ブラジルでは38万8015人の医師がいるが無医師の自治体が397、人口1千人当たりの医師数も北伯や北東伯では1・01人と1・23人と極度に低い。このため、北伯や北東伯の無医地区に派遣するスペイン人医師を再評価せずに〃輸入〃する合意が成立、20日にはやはり関心の高いポルトガルも含む伯、西、葡3国関係者がジュネーブで会談を行った。
スペインやポルトガルからの医師輸入問題は、5月に入って、アントニオ・パトリオッタ外相が6000人のキューバ人医師と契約を結ぶ意向と発言して以来、急速に関心が高まった。同外相はキューバ人医師にのみ言及し、CFMなどが懸念の色を示していたが、アレッシャンドレ・パジーリャ保健相は14日の全国市長との会合後、「スペインやポルトガルの医師を最優先」と発言しており、スペインとの合意が最初に発表された。
CFMは14日の時点で、スペインとポルトガルの名前が出てきたのはキューバ人医師入国のための煙幕と見ていたが、今回は外国で免許を取得した医師への再評価抜きでのビザ発給と知り、ブラジルで免許を取得した医師達と扱いが異なり、緊急医療などに支障が生じる可能性があるとして、ジウマ大統領に即座の差し止めを要請した。
パジーリャ保健相は、再評価をすればブラジル側が任地を特定出来なくなるし、外国人医師の輸入は一時的なものと釈明。過去10年、求人14万人に対し新卒医師は9万人に過ぎず、ジウマ政権では発足当初から対応策を検討して来たという。
人口1千人当たりの医師数は連邦直轄区でこそ4・09人と高いが、南東伯2・67人、南伯2・09人、中西伯2・05人で、全国平均は米州や新興国の平均以下。マラニョンやパラー、アマパーでは1千人当たりの医師数は1人未満だ。
他方、千人当たりの医師数がブラジルの2倍のスペインやポルトガルでは失業医師が2万人。ブラジルが直近に必要とする2万6千人の医師の枠を埋めるには輸入が最短の解決法といえるが、世界保健機構(WHO)は「医師の輸入は根本解決にはならない」と警告している。
なお、外国人医師が参入するのは一般外来や基礎的な手術で、集中治療室などには配置しない。保健相は千人当たりの医師数が2人以下のボリビアとパラグアイは輸入対象外というが、19日付エスタード紙によれば、ブラジルにいる53カ国2399人の外国人医師中880人はボリビア人。以下、401人のペルー、264人のコロンビアが続き、216人のキューバは第4位だという。