ニッケイ新聞 2013年5月29日
6月3日に有効期限が切れる暫定令(MP)の承認を巡り、下院、上院での水面下の動きが一段と加速されていると28日付ブラジルメディアが報じている。最大の焦点は、電力料金の20%値下げと建築、小売業界などに対する減税措置を巡る二つのMPだが、休暇明けで期限切れとなるMPは全部で八つあるという。
14年大統領選のために国民人気を高めたいジウマ大統領にとって、何としても通過させたいのは電力料金値下げに関するMP605号と経済刺激のための減税措置に関するMP601号で、この二つのMPは共に3日が有効期限だ。
グレーシー・ホフマン官房長官らが国民生活に直接響く重要案件と主張するMP二つは、28日中に下院通過の合意が成立したが、問題は、港湾ターミナル民営化のためのMP595号が有効期限当日に持ち込まれ、充分な審議も出来ずに承認した上院が、期限が切れる1週間前までに持ち込まれたMP以外審議しないと宣言している事だ。
16日が有効期限だったMP595号を巡る政府と議会の攻防はいまだ記憶に新しいが、二つのMPだけは通したい政府に対し、壁になるのは、有効期限の1週間前までに持ち込むよう要求したレナン・カリェイロス上院議長が28日に渡された議案の審議を受け付けるか否かだ。
同議長が1週間前までにと要求したのはMP595号承認直後で、MP605号とMP601号が28日に下院を通過しても、上院議長が審議を拒否すれば、政府側は別のMPか緊急扱いの新法案提出が必要となる。
また、レナン議長が約束を覆して審議を始めたとしても、聖体祭(コルポス・クリスティ)休日の30日から6月2日までは議会が休会となるため、両MPの審議は29日と3日のみ。MP595号よりましだが、審議日程に余裕はない。
だが、ジウマ大統領が1月に公約した電力料金値下げのためには、エネルギー開発のために電力会社が拠出する資金であるCDEを使う事を盛り込んだMP605号の承認は不可欠だ。また、MP601号は、インフレ抑制と経済刺激の相反する要因を満たすため、給与支払い時に徴収していた税金の一部を収益の中からの徴収に変更する減税措置を、建設や小売など16業界にも拡大するもの。MPが無効となれば発令と同時に始まった措置も中止され、市場の混乱と政府のイメージ低下は免れない。
国民生活に直接響くMPだけは通したい政府や与党リーダーは、27日下院通過、28日から上院審議の流れを描いていたが、正当な理由なき解雇時の勤続期間保障基金(FGTS)の罰金徴収停止問題の採決が先と主張する議員がおり、MPの採決が遅れた。下院では28日朝、FGTSの件を3日に採決する事を条件に合意成立、午後1番でMP605号を承認したが、フォーリャ紙サイトによると、上院議長はMPの審議を拒否。両MPの無効化は必至だ。