北東伯=干ばつが地域経済に影響=大統領の口約束に不満=将来への不安は解消せず=貧者が立ち上がる手段はし
ニッケイ新聞 2013年4月9日
「50年間で最悪」と言われる干ばつに見舞われている北東伯では、生活扶助などでカバーできないほどの経済上の損失も生じ、住民の間に将来への不安が広がっていると7日付エスタード紙が報じた。
セアラ州フォルタレーザを2日に訪問したジウマ大統領が、北東伯向けに90億レアルの渇水対策を発表した事は4日付本頁既報だが、北東伯の経済的打撃は深刻で、政府の対策は表面的過ぎると考える市長達もいる。
大統領は同日、労働者党(PT)政権の社会政策は北東伯の農家が最悪の状態になるのを防いだと発言したが、ボウサ・ファミリア、ガランチア・サフラ、ボウサ・エスチアージェンといった所得分配策は、貧困者や農家が食べる物を保障しても、地域経済は困窮、今後に不安を抱える人々が出ているという。
ペルナンブコ連邦大学のジョアン・ポリカルポ・リマ教授によると、今回のような干ばつへの備えが出来ていない農家は数多く、各種社会政策は気候変動で農業生産が落ちた時の助けにはなるが、農産物減産や家畜の死などは、地域経済に長期的かつ深刻な影響を与えるという。
ペルナンブコ州アグアス・ベラスのジュベナル・リラ・フェイトザ、イオランダさん夫妻は、家族農支援計画による融資で、1990年は1頭だった牛を38頭に増やしたが、最賃一つの年金収入の今は食べていくのが精一杯で、家畜の餌が買えなくなっている。
アパレシド・シウヴィノ・コエーリョさんの場合、幼少時の1970年の干ばつで、政府支援の作業現場に働きに行った兄達が週末になると食料を持ち帰った事、83年と93年の干ばつでは住民が政府の食料庫を襲って食料を強奪した事を証言。生活扶助を元にして受けた融資で牛を買い、食料確保と収入増を図ったが、今回の干ばつで牛を売らざるを得なくなり、生活扶助と給水車で食いつないでいる。干ばつ後も牛を買えば同じ事の繰り返しになるかもと恐れる同夫妻は、将来への不安を隠せない。
同州では今回の干ばつで15万頭の牛が死亡。死ぬ前に屠殺したものも含めると、牛の数は71万頭減り、牛乳の生産量は72%落ちている。
バイア州では、繊維業で使うサイザル麻の生産量が2011年から減少し、南東伯などへの農民移動が起きて、農業生産を更に悪化させている。
2日発表の渇水対策を不服とした同州自治体連合(UPB)は、干ばつで悩む市町村の長を中心に「水なし農民運動」と称する社会運動を組織、ブラジリアまでの行進を計画中だ。UPB代表は「南東伯で災害が起きればすぐ対応するのに、北東伯には同様の対応をしてくれない」し、「政府が約束するわずかの金を受け取るためには膨大な労力を費やす」と嘆く。
バイア州で非常事態宣言をした市町村には、17万5千家族の先住民の19%(3万3千家族)がいるが、彼らは国や州の対策の枠外だ。