ニッケイ新聞 2013年4月17日
中国にはトウモロコシが輸出できるのに、50年来で最悪の干ばつに苦しむ北東伯には、トウモロコシが届かないと15日付エスタード紙が報じた。国内での農産物輸送より中国への輸出の方が容易という事態は、国際通貨基金(IMF)専務理事が指摘する輸送網の不備が一因だ。
トウモロコシをレシフェに運ぶより中国の方が簡単—。これは、ブラジルの運輸システムの弱点〃アパゴン・ロジスチコ〃について語る記事につけられた見出しだ。
干ばつで悩む北東伯では人や家畜が食べるトウモロコシに事欠いているのに、中西伯で収穫したトウモロコシが中国に輸出されているという事態は、生産者や購入者のエゴの故のみではない。
中西伯から北東伯への農産物輸送は水運や鉄道の利用が難しく、充分整備されてない道路をひた走るトラックだけが頼みの綱。一方、トラックの運転手にしてみれば、手ぶらで帰ってこなければならない北東伯への旅は、農産物を運んで肥料を持って帰る港への旅ほど見返りがない。
道路の状態は最悪で通行料金が高く、1日の走行時間や休憩時間などを決めた法律が昨年から適用されている事も経費を引上げ、北東伯への農産物輸送に名乗りを上げる業者は少ない。
これが大豊作のトウモロコシが北東伯に届かない最大の原因と知る政府は、トウモロコシを市場価格より高く買い、消費地まで届けさせる形の入札を3回行う。最初は、サンパウロ州カンピーナスでは25レアルで売っている60キロ入りの袋を43レアルで5万トン購入。2回目は10万3千トンを買い入れ消費地に寄贈、州政府が1袋18・12レアルで売れるようにするなどして、干ばつに泣く北東伯支援に肩入れ中だが、小規模農家が使う家畜の餌だけで30万トンという現地の需要を満たすには不十分だ。
この状態は大豆やサトウキビの輸送量が増えれば更に悪化するため、北東伯ではアルゼンチンからの農産物輸入の再開を希望しているが、同国との間の貿易問題と、在庫や輸出用の農産物があるのに輸入するという矛盾が枷となりそうだ。
サンパウロ州のサントス港やその周辺の道路が大豆を運ぶトラックで大渋滞している事は本面でも既に報じたが、16日付フォーリャ紙は、クリスティーナ・ラガルドIMF専務理事の、ブラジルが経済成長を望むなら輸送網の整備が急務との言葉を掲載。ラガルド氏は、ギド・マンテガ財相がよく使う〃為替戦争〃は〃為替不安〃程度といなした上、ブラジルの経済成長を妨げているのはインフレより基幹構造(インフラ)で、商品の供給や流通を全国レベルで妨げている輸送網を早期に整備出来れば、状況はかなり改善されると指摘している。
ジウマ政権は昨年、陸・海・空の輸送システムへの大型投資計画を打ち出したが、入札さえままならない状況下、本格的かつ有効な経済てこ入れ策が求められている。