ニッケイ新聞 2013年4月20日
ベネズエラで続く大統領選後の混乱収拾のため、南米諸国連合(ウナスル)首脳が18日夜、緊急会議開催と19日付伯字紙が報じた。ベ国選挙評議会は同日、全票監査の実施を認めたが、アルゼンチンで大規模な抗議デモ発生、パラグアイでは大統領選キャンペーン終了などウナスル諸国が揺れている。
リマで行われたウナスル首脳会議は、域内諸国の要請を受けたペルー大統領が、大統領選後、死者まで出る混乱が続くベネズエラについて話し合うために召集した。
同会議には、ブラジル、アルゼンチン、ボリビア、コロンビア、ウルグアイ、ペルーの6カ国首脳とベ国のニコラス・マドゥーロ氏が出席。エクアドルのラファエル・コレア大統領は欧州訪問中のため、欠席した。
ブラジルは既にマドゥーロ氏の当選を認めており、ジウマ大統領は、ウナスルがマドゥーロ氏を承認している事を内外に示す事と、全票監査が行われるまでマドゥーロ氏の当選を認めないとした米国や米州機構への抗議という二つの目的でリマに飛んだ。マドゥーロ氏は首脳会議で「ベ国には野党はいない、陰謀があるのみだ」と発言し、米国や野党のカプリレス氏らを糾弾したという。
一方、同国選挙評議会は18日夜、2%足らずの差で落選したカプリレス氏らが求めていた全票監査を承認。選挙当日の監査から漏れた46%分の監査を行う。同国では電子投票後に投票した事を証明する紙片を印刷、それを投票箱のような箱に入れて投票終了で、投票日には抽選で選んだ機械の集計結果と紙片の照合を行う。通常は全票監査は行わないため、選挙評議会も15日に監査継続を拒否したが、死者8人に多数のケガ人発生、就任前夜の18日も抗議が続く中、野党側の要請を飲んだ。監査には1カ月を要す見込みだ。
野党側は監査終了までマドゥーロ氏当選を認めない意向のため、国会では議長が「選挙結果を認めぬ議員の話は聞かぬ」「出て行きたい奴は出て行け」と発言。大統領就任式は国が二分したままの19日、ジウマ大統領ら、中南米数カ国も首脳参列の中で行われた。
一方、クリスチーナ大統領不在のアルゼンチンでは18日夜、なべ釜を叩いての「パネラッソ」と呼ばれる抗議デモが発生。7カ月間で3回目の大規模デモには野党党首や裁判官らも参加し、ブエノスアイレスでは100万人が5月広場を埋め尽くした。「ラパスの洪水やオンセ駅での列車事故を防げなかったのは汚職が原因」「高インフレや治安悪化には耐えられない」との声は他の州都などでも聞かれた。
パラグアイ大統領選は21日の投票を待つのみで、同国在住のブラジル人農家ではコロラド党の復帰を希望する声が高い。フェルナンド・ウゴ大統領の弾劾裁判後、南米共同市場(メルコスル)やウナスルの参加停止とされた同国が、ベ国を加盟させるための政治的策略という思いを捨てて両組織に戻れるかも注目される。