ニッケイ新聞 2013年4月24日
両親の離婚、海外移住、養父母との生活、そしてホームレスのシェルターへ—。あらゆる困難を乗り越え、日系三世のラファエル・ユキオ・クスキさん(20)は今年3月、念願の愛知大学入学を果たした。「ザ・ジャパン・タイムス」が報じた。
クスキさんは現在、「のわみ相談所」(愛知県一宮市)が運営する、ホームレスや生活困窮者向けのシェルターに住んでいる。20代、60代の男性二人との相部屋で、学習机もないが、「いい環境。施設に入れて良かった」と語る。
両親はクスキさんが生まれる前、ブラジルから同県豊橋市に移った。彼が小学校にあがる前に離婚し、母親は彼が中学校を卒業後、オーストラリア人と再婚した。
3人でオーストラリアに住んだが、新しい家族に馴染めず、1年半後、兄夫婦を頼って一人で日本に「帰国」。無職で収入がない兄の下、愛知県立知多高等学校に通い勉学に励みながら、1杯のカップヌードルでその日の飢えをしのいだ。
やがて兄との関係が悪化し、高校1年の夏、児童センターで紹介された養父母の下に移った。しかし、自宅での勉学を禁じ、働くことを強制する養父母との同居は楽なものではなかった。クスキさんはラーメン店とコンビニエンスストアでのアルバイトを掛け持ちし、深夜まで働いた。布団の下で見つからないよう勉強する時間だけ、「色々な問題から自由になれた」と話す。
高校では優秀な成績を収めるも、同年2月に疲労から肺炎を患い、入院。夏に退院後は、児童福祉センターで紹介された一宮のシェルターに身を寄せた。
同居人に迷惑をかけまいと、学校に通う電車の中で学業に励む日々。そんな彼の努力は、3月8日、愛知大の合格通知によって報われた。「何度も断念しそうになった」と長い道のりを振り返った。
夢は教師になること。入学後はボランティアとして、シェルターに住む日系ブラジル人に勉強を教えたいという。
「日本が、僕のような立場の日系人が夢を追うことが出来るような国であってほしい」