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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年4月25日

 どの国でも一長一短ある。その国に住む外国人にとっては悪い部分が見えやすく、滞在国の悪口をいうのはどの国の人でも同じ。異国で同胞意識を深め合う作業でもあるのだろう。良い部分に目を向けると、当国においては市民の素直な好意に高評価が集まる。「ブラジル人は金のかからないことには親切」という皮肉屋の言葉はさておき▼老人や妊婦、子連れへの地下鉄における対応には感服するばかり。レストランでも子供連れは従業員や他の客の慈愛に満ちた視線に包まれる。日本社会の不寛容さも手伝って若い母親が育児ノイローゼになる話を聞くと悲しくなるばかりだ。子供を身体障害者に置き換えても同じこと▼現在、開催中の「ひろしま菓子博」での対応が大きな話題を呼んでいる。実行委員会が電気車椅子での入場を禁止。理由は「暴走する可能があり危険」だとか。抗議を受けて平日のみ、後日、全日程で許可したが「混雑時は手動式に乗り換えること」が条件だ。今も全面受け入れを求める抗議文が届いているという。まるでジョークだ▼ブラジルでこんなことがあり得るだろうか。誰かが提案した段階で一笑に付されるだろう。うんざりすることも多いこの国だが、いいなあと心の底から思えることも多い。身体障害者が堂々と生き、それを普通のこととして受け入れる姿だ。それに気づくのもマイノリティに厳しい日本を知っているからだろう▼初の被爆地であり「国際平和都市」を掲げる広島には、国外からの観光客も多い。この判断が国際的に理解されると思っているのだろうか。広島市民も理解に苦しんでいると思いたい。(剛)