ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 下院憲政委員会=三権分立無視の法案承認=メンサロン被告もメンバー=判事「報復行為だ」と反発=新政党法案は差し止めに

下院憲政委員会=三権分立無視の法案承認=メンサロン被告もメンバー=判事「報復行為だ」と反発=新政党法案は差し止めに

ニッケイ新聞 2013年4月26日

 メンサロン裁判の被告を含む下院の立法委員会(CCJ)が24日、連邦最高裁の権力を弱める法案を承認した。最高裁判事たちはこれに強く反発。ジウマ大統領再選に有利な新党規制法案の上院での審議差し止めの暫定令を出した。25日付伯字紙が報じている。

 CCJが承認したのはナザレノ・フォンテス下議(労働者党・PT)提出の憲法改正案(PEC33)で、議会が承認した法案を最高裁が違憲と判断し、判例の一つとした場合は90日以内に議会がそれを審議、最高裁判断を不服とした場合には国民投票に問うとするもの。最高裁による「違憲」判断も、従来なら11人中6人が認めれば違憲となるところを、9人(80%)の承認に引き上げるとしている。
 CCJはこの提案を24日午前、議論も行わずに投票、賛成多数で承認した。CCJのメンバーにはメンサロン事件で有罪判決を受けたジョゼ・ジェノイノ下議とジョアン・パウロ・クーニャ下議(ともにPT)も入っている。両氏はメンサロン裁判で有罪になり、12年12月17日の最高裁で「議員は有罪判決の時点で罷免となる」との判断を受けた。それに対し議会は、「議員の処遇は議会が決める」と強く反発していた。
 最高裁判事たちは、司法府の判断を立法府が覆すことを可能とする法案に猛反発した。マルコ・アウレリオ・メロ判事は「これはメンサロン裁判に対する議会からの復讐だ」との見解を示した。
 ジルマル・メンデス判事も「恐ろしいことだ」とし、事態を1937年に当時のジェトゥリオ・ヴァルガス大統領が最高裁判断を無効にしようとしたこと(行政府による介入)と比較した。法の専門家たちも、「立法能力を判断するのは最高裁だ」として、PEC33に批判的だ。
 メンデス判事は24日夜、18日に下院で承認された、新政党に対する資金フンド・パルチダリオと政見放送の時間を規制する法案に対し、上院での審議を差し止める暫定令を出した。
 この法案は、新党設立中のマリーナ・シウヴァ氏(持続ネットワーク・RN)や新党の民主運動(MD)との連立協力を得たいエドゥアルド・カンポス氏(ブラジル社会党・PSB)という、14年大統領選立候補が有力視される2人を不利にし、ジウマ大統領再選を圧倒的に有利とするため、同じく大統領候補と目されるアエシオ・ネーヴェス氏(民主社会党・PSDB)もマリーナ氏やPSBらと組んで反対運動を起こしていた。
 一方、エンリケ・アウヴェス下院議長は同日、警察と検察庁の代表と会合を開き、検察庁の捜査権限を取り上げる条項を盛り込んだPEC37に対する合意を求めた。同法案にはロベルト・グルジェル長官らが憤慨しているが、同議長は「6月に議会の投票にかける」ことは譲らなかった。
 PEC33は、下院・上院の本会議で60%以上の賛成で承認となる。