ニッケイ新聞 2013年3月1日
陸、海、空のインフラ整備などに外国人投資家の参加を募るため、マンテガ財相がニューヨークで10%以上の見返りありとアピールしたと2月28日付伯字紙が報じたが、持ち家政策のミーニャ・カーザ、ミーニャ・ヴィダ(MCMV)に関しては、外国人投資家の多くが期待を裏切られて苦闘中と同23日付エスタード紙が報じている。
マンテガ財相の米国訪問は、ジウマ政権が昨年発表した道路や空港、港の整備計画(総額2350億ドル)への投資参加を呼びかけるためのもので、ロンドンや東京も目的地に入っている。
インフラ関連事業の推進には外国人投資家の参加が不可欠と知るジウマ政権は、国外でのアピールをマンテガ財相に委任。国内でのアピールは27日にジウマ大統領とネルソン・バルボーザ財相代理が行った。
2014年の大統領選出馬を前に経済活動を軌道に乗せたいジウマ大統領には、経済活性化計画(PAC)などの大型事業推進は必須事項だが、悩みの種は投資の不足。2011、12年の経済成長率が落ちた上、基礎的財政収支(歳入と歳出の差)を目標に近づけるために年末になって諸工作をした時も、今後の成長を促すための投資の必要が指摘されていた。
ジウマ政権の頼みの綱は外国人投資家だが、10%以上の利益還元、高条件の融資などと訴えても、事業所開設手続きや会計処理の煩雑さなど、ブラジル独特のお役所仕事やインフレなどを知る投資家の顔は晴れない。
ブラジルの事業投資は、入札がどんどん遅れる高速鉄道(TAV)や、プロジェクト承認に手間取るうちに人件費や材料費が高騰し、30%の利益還元どころか持ち出しになる企業も出ているMCMVなど、外国人泣かせのものが多い。
TAVは、調査が不十分で融資や出資による損失リスクが大きくなり過ぎると判断した検察庁が、2月25日に入札取消しを求めて連邦政府と陸運庁を提訴、8月の入札が更に遅れそうだ。
MCMVは、プロジェクト承認だけで1年以上かかるといったお役所仕事により、用意した資金が底をつき、最低30%の利益還元どころか、最初の仕事用の事業所を売却して二つ目の事業を始めた外国企業や、「MCMVには二度と手を出さない」という企業が続出しているという。
外国企業の中には、欧州経済危機の影響下、自国での事業を諦めてMCMVに手を出して立ち行かなくなった例もあり、エスタード紙は「MCMVは欧州投資家の悪夢と化した」と評した。
MCMV以前からブラジルの事業に参加していた外国企業の中には平然としている企業もあるが、外国人投資家にとり、ブラジルの重税と手続きの煩雑さが頭痛の種となる事は従来から予想されてきた事だ。W杯やリオ五輪も控えたブラジルが真の意味で魅力ある投資先となれるかは、お役所仕事の簡略化と税制改革にかかっているといえるようだ。