ニッケイ新聞 2013年3月2日
安倍政権が発足してから「円安」が進み一時は94円台にまでなり、財界首脳は「これで企業の輸出に拍車が掛かる」と大喜びしているが、この為替相場と言うものにはマイナスの側面もあるので単純に歓迎という訳にはいかない。自動車や造船、機械などの輸出商品には大いに結構なことながら輸入品は高くなり、まあ—一般市民らは苦い表情になって「苦しい」の悲鳴を上げ、これをまたマスコミが面白がって?報道する▼先に弊紙でも「日本、電力、ガスなど値上げ」と報じたけれども、確かに物の値上げは誰にとっても喜ばしくは無い。電力は福島原発に端を発し廃棄論が強まり、致し方なく火力発電に切り替えが行われ、石炭や石油、ガスなどの輸入が急拡大している。このため全国の電力10社が値上げに踏み切ったのであり、これも民主党政権が「2030年で原発廃止」を掲げた影響が大きい▼尤も、この廃止方針には、財界も反対であり、自民党も「見直し論」が強い。首相は施政方針演説で「原発再稼動」を表明し、当面の難局を乗り切るけれども、長期的なエネルギー政策の確立を急ぐべきは論を待たない。勿論、ドイツのように「全廃」したところもあるが、中国を始め原発建設の動きが強く、東芝や日立などの企業も輸出に向け活発に行動している。このような輸出企業には「円安」は、待ち望んでいた事態であり、間違いなく—胸を高鳴らせている▼あのトヨタは、為替が、1円、たったの1円安くなるだけで営業利益が350億円もが増えるそうだ。と、為替相場は輸入品の高騰を招き輸出黒字—と何ともややこしく難しい。(遯)