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ブラジル文学に登場する日系人像を探る 6—ジョセフ・M・ルイテン「ブラジルのコルデル文学」—民衆本にうたわれる日系人=中田みちよ=第5回

ニッケイ新聞 2013年3月8日

 パウロ・ヌネス・バチスタというノルデステ出身者のコルデルを紹介しましょう。日本賛歌がはじまりました。灰燼の中から蘇った国というイメージが世界に流布しましたからね。
 日本のABC
 日本は群島だ、千をかぞえる島々。
 日のいずる国、富士山から火山まで
 満開の桜、光のいずる国、愛の地
 すばらしきかな日本!
 麗しい山々、美しき浜辺が本州中心に
 四国や北海道それから遠隔の九州
 ボンサイとハイカイとサムライの国…
 山塊そびえる中部地方
 魚の天国・・・日本 世界に漁業を伝授
 太平洋にのりだしや日本海にもぐる
 漁業こそ得意技 
 常にトップを保ってきた
 それからもう一つ新しい動きが出てきました。北東部以外に住むようになった北東人の子孫が大学生や自由業者となり、自らの文化的ルーツに目覚めだしたのです。コルデルはサンパウロ第5回国際書籍ビエナールの時に、詩人のフランクリン・マシャードが小冊子販売と歌い手の場所を確保し、顔を出したことで、市民権を得ました。
 1970年代になって、日本人に関わる二冊の小冊子が出版されました。そのうちの一冊がラファエル・カルバーリョの「ライト社が出産し、ブラジルが出産費用を払った 1979年」。ここではライト社の買収に際してニッケイの二世大臣が汚職にかかわったと言及されています。
 ウエキ、バルバーリョ、ガロッチ(当時の三大臣の名称)
 ガロッチ、バルバーリョ、ウエキ(当時の石油エネルギー相)
 使い古した子どもじみた
 言葉の遊びさ
 商人の踊りはばかていねいだ!
 汚いこだまが聞こえる
 語るのは裏切りの声だ
 ライト社の購入をめぐる裏切り
 ルットファッラ家(マルフ州知事(当時)の実家)への援助
 奴は民衆の金で、マルフやアタッラ(当時のアルコール砂糖院会長)を救っている
 シゲアキは手に負えなくなり
 残酷で気ままだ
 ブラジルの民衆を担保なしの債権者にした
 当時の植木シゲアキ大臣に対する評価は厳しく、ずいぶんこき下ろされています。カナダ系電力会社ライト社の買収に際して、定款では10年後に自動的にブラジル国のものになるのを、サンパウロ州政府が前払いを決定した汚職事件。しかも、シゲアキは政界では「ジャポネース」と呼ばれていたんですよ。多分、同胞の面汚しという印象だったと思います。
 しかし、政治というのは清濁併せ呑まなければやっていけない世界でしょうから、真実は、結局藪の中。あるいは反対にスケープゴートだったかもしれませんしね。
 1984年にルイス・ゴンザーガ・ダ・リーマはこんなコルデルを作りました。彼は故郷のペルナンブッコ州からでてきて、サンパウロ州奥地の日本人農園で働きます。実はサンパウロ近郊で農業をしていた実弟も、一度ルス駅まで出向いてセベリーノを雇い入れたことがありました。
 レシーフェで絵を画いていた家族だそうで、鍬をもったこともなく、降霜のある朝などは歯の根が合わないほどガチガチ寒さに打ち震えて仕事にならず、本人もサンパウロはこりごり。結局、バス賃を与えて故郷に帰したことがありました。Uターンしたセベリーノもずいぶんいるはずですよ。(つづく)