JICA日系研修員
ニッケイ新聞 2013年3月13日
JICA(国際協力機構)による『平成25(2013)年度日系研修員』の応募が始まった。同制度は中南米の日系人を対象に、農業、教育、医療、社会福祉、服飾など幅広い分野で最大10カ月間の研修の機会を提供するもので、経済援助を受けながら専門技術や日本語のスキルアップを図ることができる。昨年初めて同制度を利用したという小松有美ファビオラ(34、二世)さんに、研修の魅力や成果を聞いた。
サンパウロ市リベルダーデ区の多文化言語センター(IMULTI)で働く日本語教師。ブラジル日本語センターの講師の勧めを受け、JICA横浜センターで昨年12月6日から約3カ月間の「日系継承教育(教師育成Ⅱ)」を受講した。
研修の柱は日本語教授法と日本文化・歴史教育で、着物の着付けやお茶、和菓子作りなどの体験学習、三溪園や江戸東京博物館など視察によって、学習内容を効果的・体験的に身につけられるよう配慮されている。「授業のレベルも高かったし、一つ一つの体験が授業内容と繋がっていて、とても勉強になった」と語る。
移民史の学習も授業の一環として行われ、「海外移住資料館で移民の名簿を見たとき、歴史を身近に感じた」と言う。個人史作成にあたっては、「日本人が外国人をどう見ているか」や「外国人の子どもが学校でどんな体験をするか」を学び、「子どもたちの置かれている状況や、自分のアイデンティティをよりよく知ることが出来た」と振り返った。
良き指導者、友人に出会えたことも研修の収穫の一つ。ブラジル、ペルー、アルゼンチン3カ国の研修仲間に加え、センター内で他の研修に参加していた世界各国の研修生にめぐり合い、異文化に触れた。
中でも横浜市国際交流協会(YOKE)による日本文化講座では、切り絵や生け花など活動を楽しみながら市民との交流を持つことができ、「授業の気分転換になったし、ここで出会う人が心の支えになった」と国際交流の充実振りを伺わせた。
小松さんは、研修を通して更に高まった仕事への意欲を胸に、「毎日皆さんに感謝する日々だった。人間としても教師としても色々な面で勉強になり、視野を広げることができるこのJICA研修を、皆さんにもお勧めしたい」と締めくくった。