ニッケイ新聞 2013年3月28日
上院が26日、家庭内労働者の権利を拡大する憲法補足法案(PEC)66を承認したと27日付伯字紙が報じた。家庭内労働者にも他業種同様の権利が認められた事で、女性の就労形態がまた変化しそうだ。
家政婦や乳母、高齢者介護などの家庭内労働者は、正式雇用率が25%程度と低く、就労時間の規定なども明確でなかったが、26日に承認、4月1日から発効と見られるPEC66では、就労時間は週44時間まで、時間外労働や夜間勤務は他の業種と同様の給与計算を行う事などを明確に規定している。
乳母や高齢者の介護者などでは泊り込みの例もある家庭内労働者は、全日制の学校が少ないブラジルで女性の社会進出を支えてきた要因の一つである一方、正式雇用率が低い業種の一つでもある。このため、就労時間の上限や勤続年限保障基金(FGTS)積立など、他の業種の労働者に保障されてきた権利が充分保障されないまま、契約を取り交わす例も多かった。
このような状況は、植民地だった国や貧富の激しい国などでも見られるが、国際労働機関などの働きかけで、家庭内労働者の地位や権利の見直しを進める動きが、ブラジルの就労形態にも影響を及ぼそうとしている。
PEC66の承認により、雇用者には、時間外労働や夜勤に関する給与計算を厳密に行う事、FGTSの積立を行う事などが義務付けられ、諸経費の負担が重くなる。この事はある程度の経済力がないと家庭内労働者を雇えない事も意味しており、中流の共稼ぎ家庭などは、月極めだった家政婦を週1〜2度の時間契約に切り替える可能性も出てくる。
また、住み込みで働く家庭内労働者やお抱え運転手、料理人といった職種は、仕事をしている時間としていない時間の区別が難しく、出勤簿を基に給与を計算するという方式がとりづらい。休憩時間のとり方も決めにくいので調整が必要だ。
FGTSの積立などで微調整が残っているが、最低賃金以上の給与や残業手当、扶養家族手当の支払い、失業保険や労災保険などの加入が義務付けられ、他の業種並みの権利を保障するPEC66は、女性政策局や人種平等政策局からも支持され、26日上院でも全員一致で承認された。
ただ、PEC66承認後も家庭内労働者を雇い続けるかとの問いに、雇用者の85%が解雇すると答えたとの27日付エスタード紙の記事は不安の種だ。家庭内労働者の大半は女性で、近年は就労の機会拡大や学歴向上で家庭内労働者を雇うのが困難になってきたために他業種以上に給与が上がったのに経済的負担が更に増すなら解雇という考えだが、PEC66には失職防止策は盛り込まれておらず、労働訴訟が増える可能性がある。非正式雇用の増加も懸念されており、これからは雇用者が被雇用者を選ぶのではなく、被雇用者が雇用者を選ぶようになるとのフォーリャ紙の言葉の実現は難しいようだ。