ニッケイ新聞 2013年3月28日
サンパウロ市東部イグアテミで26日に予定されていた大規模な立ち退きが、軍警と住民の対立を招き、住人に負傷者が出た後に中止となった。27日付伯字紙が報じている。
対象となった土地は13万平米の「ピニェイリーニョ2」で、600世帯、約1700人が生活している。この土地は12年6月に占拠され、所有者のエラクリデス・デ・カマルゴ・フィーリョ氏が立ち退きを求めていた。住人たちはエラクリデス氏が1区画3千レアルで土地を売って占拠を誘発したと主張しているが、同氏の弁護士はそれを否定している。
州裁判所は12年8月に立ち退き命令を出したが差し止めを求める嘆願があり、軍警も延期を求めたために実施が遅れていた。立ち退き問題は3月11日にハダジサンパウロ市市長も知るところとなり、10日後には、市が土地を接収し、120日以内に住民登録を行うという意思を表明したが、州裁判所は3月22日に再度の立ち退きを決め、26日午前6時に軍警が現場に派遣された。
住人側は手をつないで侵入を拒んでいたが、軍警が午前9時頃に域内に立ち入ろうとして戦闘状態となった。住人側は投石ななどで反抗、軍警は催涙ガス弾などを使って対抗した。住民たちは軍警がゴム弾も使用したと主張しているが、軍警側は否定している。軍警は女性や子供も攻撃し、けが人が15人ほど出た。
この状況を見たハダジ市長が午前11時45分頃、アウキミンサンパウロ州知事に土地接収の意向を伝えたため、州知事も裁判所に立ち退き差し止めを要請、これを受けたジュランジル・デ・アブレウ判事が、午後1時に差し止め命令を出した。
かねてから立ち退き停止を求めていた州検察のマリオ・マラキアス検察官は「市の意思表示も遅いが、判事も聞く耳を持たなかった」と批判。アブレウ判事は、市が接収をはじめなければ立ち退きを再命令する意向だ。