ニッケイ新聞 2013年3月29日
ジウマ大統領が27日にBRICS首脳会議で行った発言が、インフレ抑制のために中央銀行が取ろうとしていた基本金利の引上げに反対するものと解釈され波紋を呼んだ。28日付伯字紙が報じている。
3月末の拡大消費者物価指数(IPCA)が政府が目標とするインフレ上限の6・5%を超えることが予想されている。それゆえ市場では、中央銀行がインフレ抑制の切り札としてきた経済基本金利(Selic)の引き上げが5月頃にあるのでは、との見方が出てきていた。
だが、ジウマ大統領は南アフリカ共和国のダーバンで行われた第5回BRICS首脳会議の席で、その中央銀行の意図に真っ向から反対すると解釈されうる発言を行った。大統領は「インフレを抑えるために経済成長を抑えなければいけないような政策には反対だ」「病気を治療する代わりに病人を殺すような政策は複雑なものだ。経済成長を終わらせて良いわけがない。そんな政策は時代遅れで臆病だ」とした上、「インフレに関する話はギド・マンテガ財相がする」と、中央銀行の独立性や信頼性を損なうような発言も行った。
ジウマ大統領の発言は中央銀行による金利引上げに反対するメッセージと解釈され、アレッシャンドレ・トンビニ中央銀行総裁らが対応に追われた。トンビニ総裁は「〃政府がインフレに対して寛容だ〃などという解釈は誤りだ」とマスコミに説明。政府の公式ブログも「大統領発言はマスコミによって捻じ曲げられた」との声明を出した。また、大統領がインフレ抑制の必要性を認めていることを示すため、補佐官が現地の報道関係者を車に乗せ、大統領のいたホテルに急行させて、直接説明するという異例の処置までとられた。
一方、ジウマ大統領の発言後、先物取引の金利が大きく変動した。発言が行われたブラジリア時間の9時30分より前は7・760%〜7・770%だった14年1月期限の金利は、11時過ぎには7・720%まで落ちた。その後は、14時20分頃のトンビニ総裁の発言後に一時7・760%まで上がり、最後は7・740%で終えた。
ジウマ大統領は金利を上げない形でのインフレ抑制策を望んでいるが、経済学者の間では、「金利による価格抑制は必要」「闇雲な投資や消費の活性策だけではダメ」との見方が強い。
なお、BRICS会議では、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国による世界・開発銀行というべき「BRICS銀行」設立を正式に発表した。同銀行は、参加国が今後5年間に必要とするインフラ投資額4兆5千米ドルの補填のために設立される。
だが、銀行の設立は合意に達したものの、ロシアが500億米ドルとされる出資金の割当額支払いに難色を示すなど、足並みは揃っていない。出資比率に関しても、平等にするのか、各国の経済状況に即したものにするのかで意見の一致を見ていない。