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農地を巡る争いは絶えず=実際以上の土地の登記=全国ではサンパウロ州2つ分の差=Incraが再検証開始

ニッケイ新聞 2013年2月7日

 地理統計院(IBGE)の統計によるブラジルの総面積は850万平方キロだが、国立植民農地改革院(Incra)が統括する農地総計は910万平方キロで、60万平方キロの差がある事が判明し、Incraが再検証を決めたと3、4日付エスタード紙が報じた。

 全国の農地の登録を担当するIncraのデータがIBGEのデータと一致しない事を指摘したのは全国農業関係鑑定士組合で、全国ではサンパウロ州二つ分に相当する60万平方キロの土地が、実態の無いまま、農地として登録されている事になる。
 農地に関する情報はIncraとIBGE、国税庁、環境省、農務省でデータ化されているが、その内容がどれも信頼できないという事はジウマ大統領が官房長官だった頃に指摘されていた。ジウマ大統領は、大統領就任後にデータの統一を命じたが、これほど大きな差がある事が公表されたのは初めてだ。
 サンパウロ州内陸部のテオドーロ・サンパイオにあるドナ・カルメン定住地に住むレイナウド・ヌーネスさんの場合、州道613号とパラナパネマ川間の農園の土地を計測し直してもらったところ、登記上は7・3ヘクタールなのに2・6ヘクタールしかなかったという。
 テオドーロ・サンパイオは実際の農地面積と登記上の面積の差が大きい自治体の一つで、全体での差は42%。土地なし農民運動(MST)による抗争事件なども多発している地域だ。
 不法入手した土地を企業などに貸し付けたりして暴利を得ている地主もいるとされる一方、公的機関の土地も私有地だとして裁判が起きるなど、問題の表れ方はそれぞれで、定住希望の農民達に土地を分割しようとしたら、1435ヘクタールあるはずの土地が1043ヘクタールしかなく、家族当たりの土地は8・5ヘクタール程度になったという例もある。
 分割された土地だけでは家畜を飼うにも不十分で、隣家と共同で家畜を飼う一方で、家長はトラクター運転手として外に働きに行くという家庭が出てくるのも、登記上の土地面積と実際の面積の差がなせる業だ。
 この様な現実に、Incraも登録された農地の実態調査(再検証)を行なう事を決めた。現在のIncraによる農地証明の発行数は、2012年前半(1日20件)の7倍の1日140件に急増したが、専門家からは、新しい農地登録の際、名義変更などによる登録であっても、古い名義の登録を削除せずに登録し、2重、3重の農地登録となる可能性も指摘されている。文書の改ざんなどを伴う不法入手はもちろんだが、Incra職員の不手際による重複などのミスも点検されなければならない。
 ジウマ政権での農地改革は、カルドーゾ政権以降で最低水準とされているが、かつての政権の農地改革が、登記上の操作を伴う実績報告であった可能性や、狭い農地で苦労する定住農民の存在は否定できない事だろう。