ブラジルとアルゼンチン、パラグアイの国境近くにあるポ語とスペイン語併用大学で、今年半ばに初の卒業生が出る。普段から日本語とポ語の2言語や多言語併用環境にいると、成否が気になる取り組みだ▼ラテンアメリカ統合大学(ウニラ)は現在、イタイプー発電所のテクノロジー広場で授業を行っている。学科は16で、来年までに24コース増える。175人の教授の80%はブラジル人だが、1600人いる学生は57%がスペイン語圏出身者。授業もポ語とスペイン語併用だ▼メルコスル加盟国が資金を出し合って創立する筈だったウニラは、合意が成立せず、〃統合〃という理念に基づくブラジル連邦大学の一つとして2010年に発足。全学科の基本テーマはラ米研究で、スペイン語の話者はポ語、ブラジル人学生はスペイン語が必修だ▼スペイン語圏の学生は2言語混交の〃ポルトゥニョル〃で会話と冗談交じりで言うのを聞き、日本人移民が話す訛りの強いポ語は〃ジャポゲース〃と呼ぶと聞いたのを思い出した▼まるっきり違う文化や言語の中に放り込まれた日本移民が、生き残りをかけて戦う中で身につけたポ語がジャポゲースだ。それに対し、ある程度恵まれた環境下の学生が単位取得や相互理解のために使うポルトゥニョル。国境沿いに住む人も使う事を考えると、複数の文化や言語、思想が接する場所で生じる当然の現象だ▼多言語を併用し多文化の中で生きる機会を持つ人は決して多くない。こういう環境は文化の再発見などにも繋がるが、ウニラのような多文化、多言語環境の学生には、文化や思想の違いを超えた真理を学び、他者との違いを認める生き方を学んで欲しいものだ。 (み)