ブラジルの美術史上、最も有名な画家の一人であるカンディド・ポルチナーリ(1903~62)の展覧会が6日、パリを代表する美術館、グラン・パレで大きな目玉作品と共にはじまった。
ポルチナーリは1903年、サンパウロ州リベイロン・プレットのコーヒー農家の息子として生まれた。
幼い頃から絵画の才能を発揮したポルチナーリは、16歳でリオの国立芸術学校で学び、25歳で欧州旅行を行なった。そこで、自身の作品のテーマとして祖国ブラジルを描いて生きていくことを決断する。
ポルチナーリは鮮やかな色彩感覚でブラジルの田園風景を主に描き、白人と黒人の混血の人を描いた「メスチッソ」や農民たちを描いた「コーヒー」で注目される。
ポルチナーリの才能をさらに発展させることとなったのが「壁画」だ。その機会を最初に与えたのはときのジェツリオ・ヴァルガス大統領で、1936~44年に教育文化保健省の建物に壁画を描き続けた。さらに44年には、後に首都ブラジリア建設で有名になる世界的建築家オスカー・ニーマイヤーの招きで、ミナス・ジェライス州ベロ・オリゾンテの聖フランシスコ教会のタイル画をまかされた。
そんなポルチナーリの最高傑作と言えるのが、1957年、ニューヨークの国連本部に飾るために描いた「戦争と平和」だ。これは14×10メートルという巨大な作品で、同本部の名物の一つにもなっている。この作品発表の5年後にポルチナーリは世を去った。
今回、グラン・パレはポルチナーリの展覧会を開催するにあたり、この「戦争と平和」を国連本部から移して展示することを求めた。巨大な壁画であるがゆえに交渉は難航を極めたが、結局、5年の月日をかけ、今回展示されることになった。
この展覧会には850万レアルを要することとなったが、ブラジル、フランスの大手の金融機関や大企業が協賛しての開催となる。
グラン・パレ側はこの展覧会に30万人の動員を期待しているが、「戦争と平和」は1カ月後には国連本部に戻る予定で、開催期間は限られている。
だが、ポルチナーリの息子であるジョアン・カンディドさんは「ヨーロッパの人が『戦争と平和』を国連本部以外の場場所で見ることのできるおそらく最後のチャンスだ」と、今回の展覧会の貴重さを強調している。(7日付エスタード紙より)