《そうなんじゃ。無機物生命や金属生物と云って、大阪大学の石黒と云う奴が人間型の労歩徒(ロボット)・安奴労意奴(アンドロイド)を作り『不気味の谷』の破苦(パニック)を克服して劇場公演までやらせようと計画しておるそうじゃ。それに、東北大学の小菅や早稲田大学の高西は医師や生物学者も巻き込んで病気までする患者労歩徒や病気を治す寺火(テラピー)・労歩徒、それに労歩徒に平徒(ペット)まで与えようと動物労歩徒を作ったそうじゃ。それから、自動知能増殖機能を持った学習が得意な博士労歩徒、さらに労歩徒の権利を主張しようと労歩徒弁護士まで企んでおる。まだその程度ならよいが、将来、金属生物が人間に神が与えた性行為の悦びを知り、無機物繁殖をして彼ら独自の文化と宗教を創った暁には、有機物の人間やその残骸で構成される冥界、その心で構成される仏界はどうなるのじゃ・・・、拙者は心配で心配でたまらぬ》
《わかりますよ、神に創られた人間がですよ、その生みの親を真似て、神様の様にフワフワ浮いたのを見て心配しております》
《それは宇宙遊泳と云うものだ。真面目な話の邪魔をしないでくれ》
《先輩! もっと素晴らしい発明を人間共が・・・。それをあっしがこの目でちゃんと確かめましたよ。これは、もう仏界を通り越して・・・、神界に・・・》
《なんじゃそれは?》
《タイマー・トンネルでござんす》
《タイムトンネルであろう。それを人間共が?》
《そうでござんす。京都の街の一角に百年前の江戸時代の町が突然現れ、道行く人まで・・・、懐かしゅーて懐かしゅーて、それはもう、すっばらしいもんでござんす。あれでもう人間は神界を完全に上まわったと確信したしだいでござんす》
《あれは映画の路景(ロケ)・施図(セット)と云う代物じゃ、ばか者!》
「そんな話よりも、森口を捕らえるいい知恵はないのか!?」
《中嶋和尚殿、良い案はありますか?》
村山羅衆の話に関心して、考え込んでいた中嶋和尚が、
「どこから捜し始めればいいのかも分かりません」
《ジョージさん、ご覧の通り誰も頼りにならぬ。皆をまとめて、指揮をとってくれぬか。お願い申す》
「いいでしょう、引き受けましょう。そのかわり一つ条件が・・・」
《なんでござるか?》
「指揮権を授かったからには、命令には絶対服従です。いいですね!」
《仕方がないであろう。服従しましょう》
《先輩、本当にいいんですか? 約束して。相手は生の人間ですよ》
《仕方ないであろう。存在価値を否定され二度とこの世に出られなくなるよりはいいであろう》
「では、最初の命令を、『森口を一時間以内に捜し出す事』、存在価値がかかっているんですよ」
《村山先輩! 言ったじゃねーですか》
《何を申した?》
《約束して大丈夫かって、ハメられたじゃねーですか! ジョージは仏界や冥界を馬鹿にしていますよ。尊敬も敬いの心もこれっぽっちもない奴です》
《小川羅衆、文句言ってる暇はない。森口を早く捜してきてもらえぬか》
《てめぇー一人で~? 畜生! 謀りやがったなジョージ!》
一時間後、小川羅衆がヘトヘトになって戻って来た。
《先輩、あらゆる所を捜しましたが、残念ながら・・・》
「見つからなかった事も、今後の作戦には大事な情報なんだ。それで、捜すのはやめて、逆に呼び寄せる事は出来ないか?」
《呼び寄せる?》