2012年にサンパウロ連邦大学(Unifesp)が実施した第2回「アルコールと薬物に関する全国調査」(Lenad)によれば、5人に1人のブラジル人が幼少期あるいは青年期に身体的な暴力を受けていたことがわかった。8日付エスタード、フォーリャ両紙が報じた。
調査対象は149市在住で14歳以上の4607人で、21・7%が17歳までに両親あるいは保護者から身体的な暴力を受けている。人口比で計算するとこの数は3千万人以上に相当する。
受けた暴力中、最も多いのは突き飛ばす、引っ掻く、つねるなどで12・4%。11・9%は体に傷が残るまで殴られたと答えた。いじめなど言葉の暴力を受けたと答えた人は12%いた。
同大学のクラリッセ・マドルガ氏によれば、この21・7%という数字は諸外国に比べて高く、他の国では12%を超えることはないという。
調査担当者らによれば、暴力を受ける子供や青少年は神経が脆弱になり、薬物に手を染める可能性が高まる。具体的にはアルコールや薬物への依存やうつ病などを引き起こす可能性は3~4倍で、調査では、コカイン使用者の52%、マリファナ摂取者の47・5%が、幼少、青年期に暴力を受けていた。
クラック、コカイン、マリファナを常用する機械工の男性(28)は、「両親が離婚して父親と住み始めたが、新しい母親に嫌われていた」と言い、父親から頻繁に暴行を受けた。殴られたりナイフで切り付けられたりした名残で、男性の鼻の骨がずれ、足にも傷跡が残っている。
理由もなく繰り返される暴行に耐えかねた男性は、なす術もなく、12歳で麻薬に手を出し始めた。男性は今も薬物常用者がたむろするクラコランジアに通うが、同じく常用者の妻が妊娠したため、薬物依存から立ち直ることを望んでいる。
調査対象者の5%はまた、幼少期、青年期に性的な暴力を受けている。この数は550万人に相当する。18歳までに売春行為をした人は1%で100万人に相当する。
マドルガ氏は「暴力行為は当たり前のことではなく、社会全体が敏感になるべき」とし、暴力行為を見たら「100番電話」で告発するよう呼びかけている。
カンピーナス州立大学の心理学者アンジェラ・ソリゴ氏の話。「ブラジルでは、暴力が子供に恐怖感を与えたり同じことを繰り返すのを辞めさせたりする手段の一つと考えられている。子供は親の所有物、子供を支配できるという考え方が浸透して、身体的、精神的暴力を誘発し暴力的な社会を形成している。学校が親に対して暴力以外の子供を教育する方法を示すことや、児童青年憲章(ECA)の遵守を促すことが必要」