グルメクラブ
6月25日(金)
ヴェージャ誌六月九日号「冬の料理に合わせるワイン」の記事が目に入った。
監修は国際的なワインの専門家。ここで引き合いに出されている料理と、それにお似合いのワインのタイプ=()内=を列記すると、グラーシュ(酸味と熟れた果実味のある赤ワイン)、フェイジョアーダ(軽く辛口の赤ワイン)、カスーレ(タナ種の赤ワイン)、チーズ・フォンデュ(コクのある白ワイン)。いわば、専門家は冬の料理とワインの仲人。それぞれかけがいのない〃結婚相手〃を選んだといったところ。
国際結婚という言葉が思い浮かんだ。グラーシュは牛肉と野菜をパプリカなど香辛料で煮込んだハンガリー料理だ。お薦めの一本は「Periquita」とあり、これはポルトガル産。料理の「国籍」とは別ものだ。
ブラジルの代表選手フェイジョアーダの相手は、チリ「Sunrise」のメルロー種。白インゲン豆を基本に豚肉やソーセージ、鴨肉のコンフィ(油や塩で漬けたもの)などをじっくり煮込んで作るフランスの郷土料理カスーレとは、「Juanico Don Pascual」などのウルグアイ産赤ワインが好相性。スイスが有名なチーズ・フォンデュにはアルゼンチン「Crios de Susana Balbo」とある。
この専門家、さてはワイン輸入代理店の回し者、そういぶかしんだ。どうしてブラジルワインが挙げられていないのか。「ヴェージャ」のような影響力を持つ一線誌がもっと積極的に国産を取り上げれば、その売り上げが伸び、ひいては質の向上にも繋がるのに。
過日のこと。リオ・グランデ・ド・スル州のワイナリー「Marson」がサンパウロ市で開催した二〇〇二年産カベルネ・ソーヴィニヨン・ワインの発表会へ足を運んだ。ここのグラン・レゼルヴァ(特別仕様品)は常に国産を代表する出来栄えを誇り、名うての専門家もプッシュしている。
寒い夜だったので、スープくらいは出されているだろうと期待していたが、肴はハム、チーズなどの冷菜とパンのみ。かといって、惨めな気分になったりはしなかった。ワイン好きのブラジル人たちの熱気に囲まれ、むしろ心華やいだ。
外国人の客の姿も見られたが、英語力を棚に上げて積極的に話し掛けるブラジル人を横に、勢いワインがこぼれそうになるくらい笑い転げている。
そう、ブラジルワインの最高の〃結婚相手〃は料理ではない、その場の陽気な盛り上がりだ。グラスを回しワインの匂いをクンクン嗅ぐようなキザな真似は止めよう。気取った料理なぞ、ケッてなもんだ。それを支えるのは、ブラジル流儀の快楽主義。味わいの真骨頂は、ブラジル人とのラフな付き合いの中で飲まれてこそ生まれる。この国で過ごしている人だけに与えられた特権なのだ。