健康広場
6月30日(水)
秋から冬場にかけて、一見理由もなく発生する肌の痒み――。高齢者に目立ちがちなこうした症状の多くが「皮脂欠乏症」。つまり、皮膚の脂分が減ることによるものだということは、前回紹介した。
加齢と冬の空気の乾燥が、不快な痒みを生むわけだが、それでは日常生活でどのような注意を心がければいいのだろうか。まず、痒みが発生するメカニズムを表で確かめてもらいたい。
最も簡単に実践できるのが、入浴法の改善だ。実は患者の約七割近くが入浴が原因で皮膚の痒みを引き起こしているという。その名もズバリ「洗いすぎ症候群」――。清潔好きな日本人ならではの症状だが、肌は洗えばいいというものではないことを認識しよう。
肌にやさしい入浴法とは――。熱いお湯は発汗をうながし、火照った体と汗が刺激になり、痒みが増す原因となるので「38~40度」ぐらいのぬるめのお湯につかること。シャワーでも熱いお湯に長時間当たるのは厳禁だ。サンパウロでも最近は冬の寒さが厳しいため、ついつい長い時間シャワーを使いがちだが、温度にはくれぐれも要注意。
タオルやスポンジで体を擦ると、皮脂が取れる原因となる。なるべくなら素手で体を洗うほうがいい。特に冬場は夏よりも汚れが少ないので、素手でやさしく洗うだけで十分だ。
石鹸の使用法にも配慮したい。肌にトラブルを抱えている人は、高齢者に限らずやさしい弱酸性のものを選びたい。意外かもしれないが「皮脂を落とさないためにも石鹸は、週に一、二回で十分だ」と専門家は見解を示している。
また、血行がよくなると体温が上昇し、痒みが増すのでアルコールや辛いものなどの刺激物を取ることもなるべく控えたい。
皮膚に直接触れる衣服も重要な要素の一つ。たびたびの洗濯で傷んだ肌着や皮膚に刺激を与えるようなものは、痒みを生じる原因となるので避けたい。理想的なものはやはり、木綿製で吸湿性が高いものほどよい。女性の場合、下着のレースには要注意。さらにピッタリと密着せずに、出来るだけゆったりと着る心がけも忘れずに。
痒みを生じさせないためには、前記のような工夫を凝らすことで、角質層を保護することが不可欠。また、もし角質層が壊れた場合でも個人差はあるが、2~4週間で角質層は回復する。痒くてもなるべく掻かずに我慢し、刺激の弱い弱酸性の石鹸を用い、保湿クリームを常用することで、症状は回復する。
まだまだ肌には大敵の冬は長い。高齢者ほど、自分の肌の状態を知り、いたわる必要がある。ただし、痒みがひどくて眠れない、湿疹が治らないなどの状態が続くようならば、専門医に相談すること。