健康広場
10月27日(水)
初夏から夏にかけて咲く、アルカショーフラ(ALCACHOFRA)。古くはヨーロッパで上流階級の食卓を飾り、媚薬だと考えられてきた。十八世紀になって、薬としての地位を確立。当時は、熱冷ましに使われていた。
食材として一般社会に広がるのは、戦後からだ。最近ではダイエットに威力を発揮するとの触れ込みで、この花のエキスを患者に注射する美容サロンも現れている。
原産は地中海沿岸。キク科の宿根草で、日本では朝鮮アザミとして知られている。初夏につく花蕾(つぼみ)を食用にするほか、春に新芽を軟白してサラダの材料にも利用。紫色の美しい花をつけるので観賞用としても大いに楽しめる。
ブラジルには、イタリア移民とともに入ってきた。サンロッケ市(サンパウロ市から六十キロ)が気候・風土に適しており、国内の約八割を出荷。毎年、十月に「アルカショーフラ・花とワイン祭り」が開かれている。
同市在住のアキヤマ・サチコさん(二世、64)によると、十五~二十数年前まで生産者の中心は日系人だったという。独自にフェスタなどを企画して、知名度を上げるために知恵を絞った時期もあった。
「日本人が栽培を始めたのは両親の時代だから、六十年以上昔のことだと思う」。イタリア移民が持ち込んだ花を、日系人がブラジルに根付かせていったと考えることが出来るのだろうか。
国内で多く出回っているのは、「ローシャ(ROXA)」という種類だ。成育を早める農薬が開発され、旬(九月~十二月)を待たずに出荷が可能。価格競争が熾烈化した。
シオミ・エーリオさん(二世、47)は、無農薬で健闘している数少ない日系農家の一人だ。七ヘクタールの農地を所有し、年間約八千箱を生産している。農薬の原料になるため、葉にも買い手がつく。
アルカショーフラの薬理効果は(1)利尿作用、(2)肝機能改善、(3)脂肪代謝、(4)消化促進──など。
肝臓を毒素や感染から保護。肝臓細胞を再生し、胆汁生成を促すとことによって肝臓を強化することが、認められている。コレステロールを下げる作用もあるほか、ビタミンA、鉄分、カルシウム、リンなどの成分が豊富。薬の塊のような植物だ。
さらに低カロリーだということから、ダイエット食品として薦められる。エキスの注射は、この辺りからの発想なのだろう。「痩せるための、最新式の技術です」なんて、宣伝文句が美容業界で飛び交う。
新聞やテレビで取り上げられたり、セレブ(有名人)も活用していることから、信用性が高いように聞こえる。エキスを直接脂肪に注入するのは、どうも乱暴な気がしてならない。
やはり、一部の皮膚科医らは「科学的な証明がなされていないし、国家保健衛生局にも許可されていない」などと猛反発している。
支持派も「注射によって脂肪分子と水素が切り離され、脂肪が血管に流れる。後は、それがほかの部分につかないよう運動すればよいだけです」と負けていない。
注射の効果がきちんと実証されているわけではないので、使用を控えたほうがよいという専門家が大半を占めるようだ。生産者のシオミさんも「糖尿病に効くと思うけど、注射で痩せるとは、ちょっと…」と首を傾げる。
オーソドックスに湯がいて食べるのが、無難かもしれない。