グルメクラブ
11月19日(金)
女三十、肌の曲がり角とすれば、男三十、肝臓の曲がり角のようだ。やや肥満が目立ち気味だったZが、突然体調不良を訴えた。医者の診断では、「肝臓に脂肪あり要注意」。三十路を特製ピンガで祝ったばかりのZ、ショック。眠れない夜が続いているんです、と漏らす顔は青白い。事情を知った同僚K。「まぁ、気にしないで。脂肪で死亡することはないから。なーんて」。くだらないダジャレで励ます彼もまた、今年三十歳。肝臓はかろうじて大丈夫のようだが、そのギャグが、オヤジの仲間入りを十分に感じさせた。
「文藝春秋」巻末ページの「社中日記」。それをまねるとこうなる。近ごろどうもおかしい。同世代の知り合いが次々と悲鳴をあげている。理由はきまって健康問題だ。ある友人は足首に激痛を覚え、某日系病院にタクシーで駆け込んだ。「捻挫ですね」との日本語にひと安心。だが、二、三日経っても痛みは引かない。どうしたものかと別の病院を訪ねたら、「痛風」だったという。笑えない、明日はわが身である。
世の風潮は禁煙・禁酒の方向に流れている。タバコの箱には禁煙を勧告する過激な写真。酒はライト(低カロリー)嗜好が強まり、あげく、〃ノンアルコール〃ビールまでが人気の兆し。これは渡りに舟とばかりに、健康に関心を抱くようになったわれらサーティーズである。
見た目からして体に悪そうな、高アルコールの安酒ばかり売っていた某大衆スーパー。先日久しぶりに行って驚いた。ノンルコール・ビールの専用棚が設けられているのだ。代表的銘柄はAmBevの「Kronenbier」。発売は一九九一年、国産初のビール風味飲料だった。これ、実は〇・三%と微量でも、アルコールを含む。Bavaria、Nova schin両社も、〃微量アルコール入り〃ノンアルコール・ビールを販売中だ。この「偽り」が裁判問題に発展したことがあった。
結局、「〇・五%」までなら〃ノンアルコール〃と表記しても良いと見なされ、騒動は収束。その後発奮したのか、AmBevは、まさに最終兵器とも言える「Liber」を開発した。こちらはだれも文句のつけようがない、正真正銘のアルコール・フリー。しっかり、〃アルコール〇・〇%〃と、赤字でアピールしている。でもどうやったらビール風味の飲料が出来るのだろう。
製造方法には大きく分けて二つある。一つは、麦芽の発酵を抑え、アルコール度数を低くする方法。発酵を途中で止めると、通常はビールの風味も出なくなるが、酵母や麦汁を工夫することで、ビールらしい味を出す。二つは、いったんビールを製造し、それからアルコール分を除くもので、ビールを真空状態で低温蒸留し、アルコール分を除くパターンだ。「Liber」は後者の方法を採用し、ドイツから輸入した機械が活躍している。
苦味が抑えられ、肝心の喉越しも及第点。すっきりした飲み口だ。カロリーは「Liber」九十二カロリーで、「Brahma」百五十カロリー。だが、アルコール削減コストが案外高くつき、値段には割高感がある。スーパー、カレフールの特売でも、「Liber」は一・〇八レアルの値札をつけていた。
ノン・アルコールビールは定着していくか。国内のビール市場に占めるそれの割合はわずかに〇・七五%。AmBevの担当者は、「Brahma」のアルコール分(五%)くらいのシェアを目指したい、と燃えているかもしれない。