健康広場
12月8日(水)
やがて大切な歯を失うことにつながる歯周病ーー。日本人の約八割が罹っていると言われるこの病気の怖さは、歯が抜ける直前まで自覚症状がないことだと前回、指摘した。今回は歯が抜けるだけでない、歯周病の怖さを考えよう。
「歯は万病の元」。意外かも知れないが、こんな言葉を口ずさみたくなるほど、歯周病が原因となる病気は多い。
歯肉に炎症を起こした歯周病菌がそのまま、血管に入り込み、身体に重大な疾患を引き起こすことがある。その具体的な症状としては、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞、肺炎、早産など生命に大きく関係する病気につながることを知ってもらいたい。
こんな恐ろしいデータも存在する。歯周病患者が心筋梗塞を患う確率は通常の二・八倍ーー。
心筋梗塞を引き起こす歯周病菌の一種は、血液中を流れるコレステロールを血管に付着させる作用を持ち、結果として血栓をつくり、動脈硬化を進行させるという。
また糖尿病について歯周病が関係する。歯周病に罹ると、歯茎の炎症のためインシュリンの機能が阻害され、結果として血糖値が上昇。糖尿病が発症しやすくなる。
逆に糖尿病の人も歯周病に罹りやすくなるので要注意。免疫機能が低下しているため、炎症により歯茎の組織が破壊されやすくなり、歯周病の発症率は約二倍に跳ね上がる。
まだまだ歯周病が原因となる病気はある。高齢者が死亡する原因となりやすい肺炎や喘息、喉頭炎などの呼吸器系の疾患も歯周病が関係する。
口腔内の細菌が混じった唾液を誤って飲んでしまい、肺に入り込んでしまい肺炎などを引き起こすという。特に要注意なのが、口の中の衛生管理が難しい寝たきりの患者だ。
高齢者とは関係ないが、胎児への悪影響も歯周病の怖さの一つである。
重度の歯周病が妊婦に与える影響は何と、アルコールや喫煙の約二倍に及ぶという恐ろしい検査結果がある。歯茎の炎症が、胎盤を収縮される化学物質を分泌。低体重児(2500グラム以下)出産を引き起こす危険性は七・五倍。
やがて多くの歯を失ってしまうだけでなく、健康そのものが損なわれかねない歯周病の怖さを分かってもらえただろうか。
(1)歯茎の腫れ(2)歯茎の出血(3)口臭がひどい(4)口の中の粘つき(5)歯がぐらつく(6)歯磨きをすると血が出る(7)硬い物が噛めない(8)冷たい物を飲むと歯がしみるーーなどの症状に一つでも思い当たる人は、すぐに歯科医に相談したい。次回は、歯周病の予防法と対策につながる生活習慣の見直しを考えよう。