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酒 ハイ、チーズorハイ、ウイスキー?

グルメクラブ

1月7日(金)

 突然ですがクイズです。
 【問い】日本人はチーズでしょうかねとぼそぼそと意見しています。アメリカ人はいやいや、クッキーでいきましょうと慇懃無礼な態度。これに対し、イタリア人とアルゼンチン人はウイスキーに決まりやと大声でまくしたて、その横でメキシコ人はテキーラを主張しています。さらに韓国人が出てきて、キムチだの一点張りです。さて、どんな場面でのことでしょう。
 【答え】各国から集まった人々が写真に収まろうとする直前の一幕。
 何かの国際会議などをテレビで見るとき、腕を組んで考える。終了後、記念撮影の際に用いられる掛け声はどれだろうかと。キムチはまあ、ありえないだろう。やはりクッキーかチーズが一般的? でもウイスキーというのは悪くない。大人がカメラを前にキリリと出来る言葉だ。
 ウイスキーといえば、今年の東京国際映画祭でグランプリを受賞したウルグアイ映画の題名にもなっている(現在サンパウロ市内の映画館で上映中)。モンテビデオの下町で零細の靴下工場を経営する六十歳独身の男が主人公。ブラジルにいる弟が久しぶりに一時帰国することになり、見栄を張りたい男は、長年工場で働いている中年の女性に弟の滞在中だけ偽装夫婦を演じてくれるよう頼む。人生の酸いも甘いもかみ分けた等身大の男女の、ほろ苦い後味を残す悲喜劇だ。日本のあるレビューで小津安二郎の作風にも例えられていたが、誇張のない演技が光る役者たちと、さしたる山場もないまま淡々と展開されるドラマは、なるほど小津の世界に通じている。実力派の監督が小さな隣国にいたとは驚きだった。
 そこで題名になっているウイスキーは何を意味しているか。実はウルグアイでも「ウ・イ・ス・キー」と口を動かして笑顔を作る習慣があるとはこの映画で初めて知った。鑑賞前、ウイスキーを飲む場面はどういう頃合いに出てくるのだろうなどと思案していたこちらは、題名に〃一杯〃くわされた格好だ。とまれ、三人の細やかな情感を織り交ぜた演技がうまい。確かな構成とテンポにも脱帽する。映画館から帰宅する途中、ウルグアイワインを飲みながらその余韻を味わい返したい気分であった。
 ウルグアイの地酒は何を置いてもワインである。とりわけ、一八七〇年ごろフランスから持ち込まれたタナ種(深い渋みを特徴とする)が白眉だ。石灰主体の土壌に適しており、全体生産量の三割をこれが占めるという。タナが主要品種となっているのは南米ではウルグアイだけ。日本にも市場を広げており、いま世界に打って出ているのはその映画だけではない、ワインも独自の味わいを誇っている。近年の収穫で当たり年は二〇〇〇年と二〇〇二年らしい。今度見つけたらウルグアイの地力を確認してみよう。うれしい驚きが待っていそうだ。
 雑誌『ヴェージャ・サンパウロ』が今週号でウルグアイのリゾート地を特集していた。タナ種の赤ワインが秀逸といっても日差しの照りつける海沿いのバーで常温のワインを注文するのは考えただけで気が滅入る。そんなとき、白ワインをフルーツジュースで割って飲むのが爽やか、ウルグアイ流だ。氷を入れたグラスに、白ワインとソーダを三対三の割合で注げばスプリッツァーという、オーストリア・ザルツブルグ生まれのカクテルになる。
 ちなみに、映画の三人もモンテビデオ近郊の海岸に旅行する。宿泊先のホテルのレストランで何を飲むかは、鑑賞してのお楽しみとしておこう。

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